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愛猫を失った男性の「ネコは外が幸せ」という誤解 「快適な縄張り」さえあれば室内でも十分に満足

東洋経済オンライン / 2024年5月19日 11時3分

外をうろつくネコは、深夜の鳴き声による騒音問題、まき散らすふん尿や残飯による人間の住空間の汚染などを引き起こします。

また、ネコは食物連鎖の上位動物ですから、外を出歩けば小動物や野鳥などに傷を負わせたり捕食したりすることがあります。野良ネコが、ヤンバルクイナやアマミノクロウサギなどの希少動物を捕食し、それらの種の存続を脅かしているという報告があります。生物多様性保全の観点からも、やはりネコの外飼いはおすすめできません。

いかがでしょうか。

ネコの外飼いが当のネコだけでなく、人間や自然環境にも悪い影響を与えることがおわかりいただけたと思います。

これらの問題を予防する一番の方法は、ネコは室内飼いを原則とし、それを徹底することです。

「家に閉じ込めておくなんてかわいそう」と思われる飼い主さんもいらっしゃるでしょう。だからといって外に出せば、ロードキルや感染症などで、ネコが寿命をまっとうできずに死ぬ可能性を高めます。そちらのほうがかわいそうではありませんか?

そもそも、ネコという動物の生態として、彼らは生きるのに広大な空間を必要としていません。

人家の中にかぎられていても、快適な縄張りがあればネコは十分に満足できるのです。強いて挙げるなら、キャットタワーのような上下運動ができる器具を用意してあげられるといいでしょうね。

それまで元気にしていた外飼いのネコが急死しても、一般的な動物病院などでは外見上の判断のみで「老衰です」「心不全です」といったように、簡単に片付けてしまわれがちです。

金属や石などの誤飲はレントゲンで診断できることもありますが、中毒や感染症となると遺体の病理解剖まで行わなければ、まず原因は特定できませんし、病理解剖までして原因が特定できないことも往々にしてあります。

今後は外飼いをやめます

茶トラのネコの遺体を持ち込まれた飼い主さんは、ネコをもう1匹飼っておられました。病理解剖の後、飼い主さんに「この子はおそらく、外で毒物を摂取して亡くなったのでしょう」という診断結果を伝え、外飼いの弊害をお教えしました。

ぼくの説明を聞いた飼い主さんは後悔している様子で、「今後は外飼いをやめます。もう1匹の子は、完全に家の中で飼います」とおっしゃってくれました。ネコの飼い方としては、それがベターです。

家族同然にしていた愛猫を失った飼い主さんたちは、多くの方が取り乱しながら「とにかくこの子が急に死んでしまった理由を知りたい」とぼくに依頼されてきます。取り返しのつかないことが起きてしまった後、みな一様に深く後悔されています。

動物の遺体を解剖する獣医病理医のぼくにできるのは、可能なかぎり亡くなった子の死因を特定すること、そして、その子に何が起きたかを飼い主さんに説明し、死から学ぶ機会をご提供することだけです。

前編(飼い主が切望「泡を吹いて死んだ」愛猫の死の真相)は、こちらからお読みいただけます。

中村 進一:獣医師、獣医病理学専門家

大谷 智通:サイエンスライター 書籍編集者

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