飲むヨーグルトが「乳酸菌バブル」でジリ貧の理由 市場は逆転寸前、かつての人気を取り戻せるか
東洋経済オンライン / 2024年5月19日 7時20分
「今、明治の飲むヨーグルトは置いてないです。(乳酸菌飲料の)ピルクルに替わっちゃいましたね」――。都内スーパーの店員は淡々と話す。
【写真】乳酸菌飲料の人気に押されがちな飲むヨーグルト。どう巻き返していくのか
明治は昨年10月、「明治ブルガリアのむヨーグルト 900g」の製造・販売を終了した。業界からは「あれほどのシェアを持っていた明治が、まさか」と驚きの声が上がった。
終売の理由について、明治は「個食化が進み、大容量品の消費量が減少しているため」と説明した。代替品として400グラムの商品を発売したが、売り上げは社内の計画値に届いていない(2023年度第3四半期決算時点)のが現状だ。
森永乳業も昨年10月、「計画に対し思うような実績が得られなかった」として「ビヒダス のむヨーグルト」(900グラム)の製造・販売を終了している。
市場全体を見ても、飲むヨーグルトの販売金額はこの6年間で17%も減少している。一体何が起きているのか。
健康か味か、どっちつかずの存在に
市場縮小の背景には、乳酸菌飲料などへの需要の流出がある。
調査会社インテージによれば、乳酸菌飲料の2023年の小売店販売金額は1341億円。ヤクルト本社の「Y1000」(「ヤクルト1000」の店頭専用商品)が発売された2021年に市場が急拡大し、その後も伸びが続いた。
一方、飲むヨーグルト市場は2021年に前年比200億円超の縮小となり、その後も停滞が続く。2023年の販売金額は1443億円で、乳酸菌飲料に追い越されるのは時間の問題だ。
両市場の拡大と縮小の時期はほぼ重なっており、飲むヨーグルトの人気が乳酸菌飲料に移っている実態がうかがえる。
さらに近年は、「キリン おいしい免疫ケア」など乳酸菌入りの清涼飲料水も台頭している。これらは法令上の乳酸菌飲料ではないが、小売店では飲むヨーグルトや乳酸菌飲料のすぐ隣に並ぶことも多く、飲むヨーグルトの需要を一部奪っているとみられる。
業界では「飲むヨーグルトは替えがきくものになっている」との指摘がある。以前は健康といえばヨーグルトと考える人も多かった。飲むヨーグルトはフレーバーが豊富で、手軽に摂取できる強みがあった。
だが、機能性表示食品制度が始まり、「睡眠の質向上」や「ストレス緩和」など具体的な機能をうたう乳酸菌飲料が登場すると、人気が揺らぎはじめた。
「健康の機能を求める消費者は簡単に乳酸菌飲料へスイッチしてしまう。味を求めるならジュースを飲めばよく、ヨーグルトはどっちつかずのポジションになってしまった」(業界関係者)。
長所が伝わらないのはなぜ?
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