評価を高める奇妙な「レッドスニーカー効果」とは 会議に真っ赤なスニーカーで来る人がいる理由
東洋経済オンライン / 2024年5月20日 10時0分
「どのシャンプーを買おうか」「どのサブスクリプションサービスに加入しようか」など、私たちは日々選択をしている。私たちはこれらの選択は自由意思のもとに行っていると思っているが、実は私たちには心理的な「癖」があり、商品やサービスにおけるちょっとした工夫が、消費者の購買行動を左右するのである。今回、人間のさまざまなバイアスと選択行動について、行動科学の知見をもとに掘り下げた『自分で選んでいるつもり:行動科学に学ぶ驚異の心理バイアス』より、一部抜粋、編集のうえ、お届けする。
集団の常識に逆らってみる
人が周囲の行動を模倣する傾向は、さまざまな研究で確認されている。その根底には、周囲に受け入れられたい、仲間外れになるのは避けたいという願望があるようだ。
これをマーケティングで利用するなら、大勢に選ばれている商品です、と伝えるのがよいだろう。実際に多く活用されているテクニックだ。私の前著でも大幅に紙幅を割いて解説している。
しかし、場合によっては集団の常識に逆らってみせることが得になる。常識や規範から外れる行為は社会から不賛同の扱いを受けるリスクがあるが、むしろそれを逆手に取るのだ。
この点では、社会的に高いステイタスをもっている人ほど、慣例からの逸脱に踏み切るハードルが低い。評判や知名度という資産をすでに稼いでいるので、多少のコストは痛手にならないからだ。
ハーバード・ビジネススクールのフランチェスカ・ジーノがこのテーマで研究を発表している。ジーノは2011年に、消費者行動研究学会(ACR)のカンファレンスを利用して調査をした。
このカンファレンスは、一般的な学会と同じく、ある程度フォーマルな服装で参加するのが通例だ。ジーノは参加者一人ひとりの服装を記録し、さらに、その人物の学会におけるステイタスを計る指標として、過去に出版した査読済み論文の数と照らし合わせた。
すると、服装がきちんとしているかどうかという点と、発表した論文の数は、反比例の関係にあることがわかった。成功している学者ほど、慣例に従わない服装をする傾向があったのだ。
この実験でわかるのは、ステイタスの高い人ほど慣例を破りやすいという点だけだ。それが他人の目にどう映るかという点はわからない。
非同調型の行動は社会的コストを伴う
ジーノはさらにシルヴィア・ベレッツァおよびアナット・ケイナンとの研究で、この点を掘り下げた。実験では被験者159人に、ある「教授」について簡単に説明し、ステイタスと能力を評価するよう求めた。
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