ロールス・ロイス初BEV「スペクター」にある安心感 BEVになっても変わらない信念と乗り味だった
東洋経済オンライン / 2024年5月20日 11時0分
車外からはドアノブを引くとアシストが働いて乗り込むのに必要なぶんだけ開く。前側が開くので足から車内に入るより、乗り込む直前できびすを返して腰から車内へと滑り込ませるほうがスマートだ。着座したらブレーキペダルを踏むか、センターコンソールにあるボタン操作でドアは電動で閉められる。外からはドアノブのボタンを押すと自動で閉まるが、ノブを持って閉めることも可能。その際も電動アシスト機能が入るので操作力は軽くて済む。
パワースイッチをオンにしてDレンジへ。駐車場から公道に出るまでは10km/h以下でしずしずと走らせてみる。わずか10km/hだがすでにこの時点で立派なロールス・ロイスであることが体感できた。パワーリザーブメーターはアクセルペダルを踏み込むと数値が100%から下がっていくが、こうしてスルリと走らせるには5%も必要としない。
全長5475mm、全幅2044mm(ミラー含めず2017mm)、全高1573mm、そしてホイールベースは3210mmだから、取りまわしには苦労しそうだ。実際、最小回転半径は6.35mと大きめ。しかし、視界が広くて死角が少ないから、このサイズから想像できないほどに運転しやすい。身長170cmの筆者は、気持ち高めに運転席座面の高さを調整することで、ボディ左前側の位置把握も難なく行えた。
駐車場から一般道へ
まずは一般道路を走る。裏通りを抜けて表通りへ。BEV=静粛性能が高いことは周知の事実だが、内燃機関であっても高い静粛性能を誇るロールス・ロイスの場合、そこは驚くべきポイントではなかった。こと静粛性能に関して誤解を恐れずにいえば、スペクターはBEVっぽさをまるで感じない。
具体的には、駐車場での微速マナーと同じく、じんわり加速させた際の加速フィールは内燃機関のロールス・ロイスで熟成してきた躍度(連続する加速度)そのもの。言い換えればドライバーだけでなく乗員全員がいつのまにか速度が出ていたと感じるような速度変化なので、ものすごく大げさに言えば車内が平行移動しているような感覚が味わえる。ロールス・ロイスではこれを「マジック・カーペット・ライド」と表現している。
筆者は以前、ロールス・ロイスの4ドアサルーンである「ファントム」(ファントムⅦのシリーズII)で計1000kmほどショーファーとして運転したことがある。V型12気筒の6.75Lで8速ATの組み合わせは静かで力強く、ボディやホイールベースは今回のスペクターよりも長かったが、こちらも視界がひらけ死角が少なく運転しやすかった。
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