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ロールス・ロイス初BEV「スペクター」にある安心感 BEVになっても変わらない信念と乗り味だった

東洋経済オンライン / 2024年5月20日 11時0分

高速道路を降りて、再び一般道路へ。ここでは右に左に続くカーブ路を選んだ。「プラナー・サスペンション・システム」の真価を体感するためだ。平面と訳されるプラナーの名のとおり、前後のサスペンションは適度な車両挙動を許しながら一定以上の傾きにならないようシステムが制御を行う。

進行方向にカーブがあることをシステム(車載の光学式カメラ)が認識するとダンパーの減衰力を高めながら、後輪操舵機能をドライバーのステアリング操作に合わせて作動させる。3mを超えるロングホイールベース車両ながら、一連の統合制御により車体とドライバーの一体感は高いままカーブを駆け抜ける。

一連の試乗を終えてベース基地で撮影を行う。最初はおっかなびっくりだったエフォートレス・ドアの操作にも慣れたころ、改めて運転席まわりを見まわした。2つの大きなTFT液晶画面が構えるインパネまわりに最新モデルらしさを実感するも、エアコンの温度調整や風量調整など、手の触れることの多い部分は、これまでのロールス・ロイスと同じく大きな物理スイッチを残している。エアコンの吹き出し口もノブを押し込むことでシャットダウンするが、これも従来から継承する。

一方で車内は帯状に配置されたLEDと、ルーフにちりばめられたLEDにより幻想的な車内を演出する。ルーフのLEDは星空をイメージしているようで、時折、流れ星の演出がなされているというが、これはあくまでも助手席や後席(広くて実用的)の乗員に向けたおもてなしの一環だ。

動力性能と充電性能について

最後に、BEVならではのスペックに触れておきたい。前後輪に備わる同期型電動駆動モーターは、前190kW/365N・m、後360kW/710N・mを発揮する。表記としては単純な合算ではなく、430kW/900N・mの内燃機関に相当するシステム出力とトルクになるよう制御を行っている。

搭載する2次バッテリーは102kWhで、オーストラリア、モロッコ、アルゼンチンから調達したコバルトとリチウムを採用する。充電時間は195kWのDC(高速充電)で34分間(10→80%SOC)、たとえば100km走行ぶんの充電ならば9分以内で完了するという。

日本で一般的な50kWのDCであれば95分(同)で、22kWのAC(普通充電)の場合は5時間30分(0→100%SOC)。なお、本国仕様の電費数値は4.16~4.48km/kWhで、23.6~22.2kWh/100km(いずれもWLTP値)。一充電あたりの走行可能距離はWLTP値で530kmとのこと。

試乗車の車両重量は2920kgで、前1380kg(47.3%)、後1540kg(52.7%)の重量配分。骨格はロールス・ロイス各モデルが採用するアルミ製のスペースフレームをベースに、スペクター専用として剛性を30%向上させ、そのフレーム内に2次バッテリーと補機類(重量700kg)を収めた。よって、ロールス・ロイス各モデルと比較しても床面が極端に高いとは感じられなかった。

BEVである前にロールス・ロイスであるという概念

ロールス・ロイス初のBEVであるスペクターは「ロールス・ロイス3.0」と称されるが、これまでのロールス・ロイスと同じく、静かで、滑らかに、そして優雅に走るという基本性能を見事なまでに受け継いでいる。BEVである前にロールス・ロイスであることがスペクターに託された本当の使命なのだろう。じつに有意義な取材だった。

西村 直人:交通コメンテーター

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