ダイキン井上会長が退任「カリスマ不在」の前途 30年ぶりのトップ交代で直面する"3つの課題"
東洋経済オンライン / 2024年5月20日 7時30分
ついにカリスマ経営者が、第一線から退く。
【写真】30年かけてダイキンを世界的企業へ飛躍させた井上会長(89)
エアコンで世界トップ級のダイキン工業は5月9日、トップ交代を発表した。6月の株主総会を経て、井上礼之氏(89)が取締役会長を退任する。1994年の社長就任以来、30年にわたり事実上のトップを務めてきたが、名誉会長となりグローバルグループ代表執行役員は続投する。
人事・総務担当の竹中直文専務執行役員(60)が昇格し、代表取締役社長兼COO(最高執行責任者)に就任。竹中氏は1986年の入社以来、エアコンの製造工場に20年以上勤務した。営業や物流の担当を経て、2020年から現職を務める。現社長の十河政則氏(75)は、代表取締役会長兼CEO(最高経営責任者)となる。
新体制が直面する3つの課題
ダイキンは創業100周年の節目を迎えている。井上会長が社長に就任した1994年当時の売上高は約3000億円。2023年度の売上高は約4.4兆円で、約14倍へと成長した。足元の時価総額は約7兆円で、約4000社ある上場企業で上位30社に入る巨大企業になった。
ダイキンの舵取りを担う竹中氏が取り組むことになるのは、同社が直面している3つの大きな課題だ。
1つ目は成長戦略の踏襲。これまで井上会長と十河社長が、二人三脚で業績拡大を進めてきた。国内のエアコン市場が頭打ちとなる中で、ダイキンは海外展開を加速。需要地の近くに工場を建設し、M&Aも活用して営業まで一貫して現地化することで世界各地に浸透してきた。
2023年度は空調事業における海外売上高比率は85%に達し、とくにヨーロッパやアメリカ、中国で高い存在感を発揮している。
ただし、足元は成長に陰りが見えている。ヨーロッパ事業の売上高は2021年度以降、毎年3割程度で成長してきたが、2023年度はほぼ横ばいへ減速。ガス価格の値上がりでダイキンが得意とするヒートポンプ式の暖房機器の売り上げが一時的に伸びたが、直近1年間で補助金制度の見直しが相次ぎ、ガス価格の下落もあって需要が失速している。
アメリカでは現地で販売会社の買収を進め、課題となっていた営業力の強化に乗り出している。ただ5月の決算会見時に十河社長は「レップ(販売会社)の買収は想定より遅れている」と語っている。インフレや金利の上昇といった外部環境の変化もあり、2023年度には米州全体で売上高が前期比82%に沈んだ。2024年度も前期比ほぼ横ばいを計画している。
コト売りへの移行も課題
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