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ダイキン井上会長が退任「カリスマ不在」の前途 30年ぶりのトップ交代で直面する"3つの課題"

東洋経済オンライン / 2024年5月20日 7時30分

2つ目の課題は、ビジネスモデルの転換だ。中長期ではエアコンなどの空調機器の販売にとどまらず、サービスで収益を得る事業構造への転換が求められている。

かつて日本の電機メーカーが得意としてきたテレビやパソコンなどは、製品のコモディティ化が進んで差別化が難しくなった。格安の労働力と大量生産によってコストを大幅に引き下げた中国や韓国の企業が台頭し、多くのメーカーが撤退を余儀なくされた。

エアコンではダイキンをはじめ、パナソニックや三菱電機などが世界大手の地位を守っているものの、中国の格力(GREE)や美的集団(Midea)などが勢力を伸ばしている。これからエアコンの普及が進むインドや東南アジア、アフリカなどの市場では激戦が予想される。

空調機器で利用されているヒートポンプ技術は、すでに実用化から100年近く経過しており、単体での技術革新は限界に近づきつつある。技術が陳腐化すれば、価格だけが差別化要素となるだけに、日系メーカーにとっては厳しい戦いになる。

そこで求められるのが、個人向け、法人向けともにモノ売りからサービス中心の事業モデルへの転換だ。しかし業界首位の座にあるダイキンですら、まだ青写真を描けていない状況にある。

社内改革も喫緊の課題

こうした取り組みを進めていくうえで避けて通れないのが、3つ目の課題であるガバナンス面での改革だ。

大手企業を中心に経営の透明性を高めるため、取締役会の過半数を社外取締役にしたり、幹部人事を行うために独立した指名委員会や報酬委員会を設置したりする動きが続いている。

ダイキンには10人の取締役がいるが、そのうち6人が社内登用。社外取締役は少数派だ。6月の総会には井上会長の秘書を長年勤めてきた森圭子氏が新たに取締役候補となり、女性取締役が2人に増える。

ただ34人いる執行役員のうち、取締役と兼任する森氏を含めて、女性は2人と少ない。また海外売上比率は8割超だが、執行役員以上の役職に外国人は1人しかいない。多様性の点では改善の余地がありそうだ。

さらに竹中氏の選任について十河社長は「井上会長と私で相談し、人事諮問委員会に諮問したうえで、取締役会で決定した」と説明した。

竹中氏は専務に就任以降、井上会長や十河社長から「毎日指導を受けてきた」(同氏)。人事、総務担当専務は井上会長や十河社長も経験したポストだ。

自らの腹心を後継に指名する構図は、外国人投資家を中心に疑問視されるようになっている。経営の連続性という点ではメリットがあるが、客観性や透明性の点では、社外取を中心に選任するほうが優れているからだ。

再任の賛成率が下落

昨年の株主総会では、井上会長と十河社長の再任について、賛成率が8割台まで下落した。たとえばJPモルガン・アセット・マネジメントは「社外取締役の比率が総会後の取締役会で過半に満たないため、代表取締役の選任に反対する」として十河社長の再任に反対票を突きつけた。

新たに就任する竹中氏がガバナンス改革に手をつけなければ、投資家から再びNOを突きつけられる可能性も否めない。

従来の成長戦略を維持しつつ、中長期では事業モデル転換に向けた手を打ち、ガバナンス面での守りを固める――。100周年目を迎えたダイキンを舵取りする、新社長の手腕が問われている。

梅垣 勇人:東洋経済 記者

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