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東洋経済オンライン / 2024年5月20日 6時30分

「5年前倒し」無理はなかったか

一方で、羊蹄トンネルの比羅夫工区では、軟弱な地質とは逆の事象が起きていた。シールドマシンの前方に10m四方に及ぶ巨大な岩塊が出現し、撤去作業に2年半を要したほか、シールドマシンの刃の交換などにより現時点で4年程度の遅延が発生しているという。

有識者会議は工程の工夫などにより工事の遅れを少しでも軽減すべしという方向性を2022年12月にまとめたが、鉄道・運輸機構は「有識者会議で議論されたさまざまな工程短縮策をもってしても一定程度の短縮にとどまる」と結論づけた。そして5月8日、「2030年度末完成・開業の目標達成は極めて困難」と国に報告した。新たな開業時期については「現時点で具体的な時期を示すことは技術的に困難」としている。

5月10日の定例記者会見で斉藤大臣は、鉄道・運輸機構から報告を受けたことに対して「この報告内容が合理的なのか、講じることができる方策がないか、有識者会議を開催しながら精査を進めていく」と話した。

その日の午後、有識者会議が開催された。今後の工程短縮策を検証したほか、新たな開業目標をどのように設定するかについても話し合われた。また、遅れの大きな要因となっているトンネル難工事の対策を進めるため、大手ゼネコンなどとワーキングチームを立ち上げたことも報告された。

会議後、国交省鉄道局と鉄道・運輸機構の担当者が取材に応じた。まず気になったのは、4年程度遅れるということは、そもそも2035年度の開業目標を5年前倒しする計画に無理があったのではないかということだ。この点について国交省は「できるという判断だった」。また、鉄道・運輸機構は「発生土の受け入れ体制などの条件が整えば5年前倒しはできると判断した。巨大な岩塊については当時想定していなかった」と述べた。

新たな開業時期は「幅を持たせた設定」?

比羅夫工区では、今回のシールドマシンの停止中に人工的な振動を用いて地質を調査する弾性波探査を行ったところ、進路上に9カ所で岩塊が確認された。これらをボーリング調査すると6カ所は規模的に掘削可能だが、3カ所はシールドマシンが停止するおそれがあり、除去の必要があることも判明した。ルート選定前にこのような状況がわかっていればルート変更などの手段も取れたはずだ。

着工前の地質調査ではわからなかったのだろうか。この点について鉄道・運輸機構の担当者は「ボーリングをきめ細かく行えば技術的には可能」と述べた。だがきめ細かく調査を行えばその分だけコストは跳ね上がる。要は現実的な地質調査としては取りうるべき方法ではなかったということだ。

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