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北海道新幹線「札幌延伸延期」で泣く人、笑う人 工事で死亡事故多発、安全とスピードの両立を

東洋経済オンライン / 2024年5月20日 6時30分

新たな開業時期について早期に示してほしいとの声が地元自治体や経済界から上がっている点については、国交省の担当者は「次の目標は何年度と決めるかどうかも含め、今後ご議論いただく」と説明。「○年度」ではなく「○~○年」と幅を持たせた目標設定となる可能性も示唆した。

開業の遅れは多方面に影響を及ぼす。JR北海道は2030年度末の北海道新幹線延伸開業を機に経営自立することを目指し、それまでの間は国がJR北海道に対して支援を行っている。このスキームはどうなるのか。斉藤大臣は「2031年度以降の対応については、JR北海道の経営改善の状況や北海道新幹線の状況を踏まえつつ今後検討していく」と述べるにとどまった。

また、北海道新幹線の札幌延伸開業に伴い、函館本線の函館―長万部間が並行在来線として切り離される。同区間の貨物輸送維持の方策についても現在、協議が続いている。JR貨物の犬飼新社長は「(並行在来線切り離しが先送りになったことで)貨物輸送存続の議論をしっかりしていく時間が増えた」と話す。JR貨物にとっては結論を先延ばしできるというプラス要素のほうが大きいといえる。

次世代新幹線の開発を行うJR東日本はどうか。札幌延伸の延期は新型車両の開発計画にも影響を及ぼしかねないが、東北新幹線で現在主力のE5系は2011年から営業線への導入が始まり、耐用年数的には数年延期しても問題なさそうだ。

工事急いでも「安全」は維持を

札幌市は新幹線開業を契機に交通結節点としての機能強化を進めており、駅前の再開発やバスターミナルの整備などに取り組んでいる。新幹線を前提にホテルやオフィスなどの民間投資も進んでいる。秋元克広市長は、「開業時期の変更となれば影響が少なからずあるかもしれないと危惧している」。また、「見通しが立たないという状況がいちばん困る」として、鉄道・運輸機構に対して「どれくらい遅れるのかという見通しを知りたい」とも要望した。

地元の「見通しを知りたい」という意見はまったくそのとおりである。一方で、「トンネルは掘ってみないとわからない」。そのような状況を踏まえると正確なスケジュールを示すのは難しい。

秋元市長は「1日も早く開業していかなくてはいけない状況には変わりない」とも述べた。これもまったくそのとおりなのだが、スピードを優先すると安全が疎かになりかねない。鉄道・運輸機構に確認したところ、新函館北斗―札幌間の工事ではトンネル坑内を中心に死亡事故が6件起きていることが判明した。作業中に後退した重機に轢かれた、作業中に重機と支保工の間に挟まれたなど、安全を十分に意識していれば防げた事故ばかりだ。また、これ以外に札幌駅の工事でも警備員がバックしてきたトラックに轢かれて死亡している。今後、拙速に走ることなく安全には十分配慮のうえ工事を進めてもらいたい。

大坂 直樹:東洋経済 記者

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