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「団塊的・昭和的・高度成長期的」思考からの転換期 「人生の分散型」社会に向かうビジョンと方向性

東洋経済オンライン / 2024年5月21日 6時50分

一方、3)の「強い「集団」志向と「ウチーソト」の区別」についてはどうか。実際のところ、団塊世代に特に顕著な行動パターンとして私がもっとも強い違和感を抱いてきたのがこの点である。

ここで「ウチーソト」の区別とは、「集団の内部では極端に気を使ったり“忖度”を行ったりするが、集団のソトの者に対してはきわめて無関心か、潜在的な敵対性が支配する」ような関係性をさしている。もちろん、人間の社会においてそうした区分が一定存在するのは当然のことだが、そうした「ウチ(身内)」と「ソト(他人)」の区別の強さあるいは“落差”が非常に大きいのが特徴的なのだ。

こうした点を論じた著作として、人類学者の中根千枝氏が1967年に公刊して大ベストセラーとなった『タテ社会の人間関係』(講談社現代新書)があるが、同書にはたとえば以下のような記述がある。

「『ウチ』『ヨソ』の意識が強く、この感覚が先鋭化してくると、まるで『ウチ』の者以外は人間ではなくなってしまうと思われるほどの極端な人間関係のコントラストが、同じ社会にみられるようになる。知らない人だったら、つきとばして席を獲得したその同じ人が、親しい知人(特に職場で自分より上の)に対しては、自分がどんなに疲れていても席を譲るといったような滑稽な姿がみられるのである。実際、日本人は仲間といっしょにグループでいるとき、他の人々に対して実に冷たい態度をとる。」

「農村型」と「都市型」のコミュニティ対比

納得感のある記述だが、私自身はこうした話題を、「農村型コミュニティ」と「都市型コミュニティ」の対比として論じてきた(拙著『コミュニティを問いなおす』)。すなわち「農村型コミュニティ」とは、“同質的な者からなる均質なコミュニティ”であり、そこでは「空気」や「忖度」といった非言語的なコミュニケーションが重要で、いわゆる同調圧力が強く、またメンバーは概して固定的で外部に対して閉鎖的な傾向が強い。

これに対して「都市型コミュニティ」とは、“独立した個人が集団を超えてゆるくつながるコミュニティ”で、個人間の多様性が大きく、言語的なコミュニケーションの重要性が高いという特徴をもち、集団の流動性ないし開放性が相対的に大きい。

読者の方はお気づきのとおり、先ほど団塊世代に特に目立つ特徴として挙げた「ウチ―ソト」の強い区別という点は、他でもなく以上のうちの「農村型コミュニティ」的な関係性や行動パターンに呼応している。

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