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JR東海「リニア」、静岡県知事交代でも残る難題3つ プロジェクトを左右する「工期・資金・人材」

東洋経済オンライン / 2024年5月21日 7時0分

リニアは東京―名古屋を最速40分、東京―大阪を最速67分で結ぶ。静岡工区以外のエリアでは工事がすでに始まっている(撮影:尾形文繁)

「知事が交代するからといって、すぐに着工できるわけではない。静岡の問題で見えにくくなっていたが、これから根本的な問題が顕在化してくるだろう」。JR東海のある関係者はそう語る。

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リニア中央新幹線の着工に反対してきた、静岡県知事の川勝平太氏が5月9日に辞職した。川勝氏は自然環境などへの影響を理由に静岡工区(全長8.9キロ)のトンネル着工に真っ向から反対していた。これを受けてリニア工事は大幅に遅れ、JR東海は2027年としていた品川―名古屋間の開業を断念した。

川勝氏に代わる新しい知事を選ぶ選挙が5月26日に投開票される。この結果次第で、膠着状態を脱する可能性が出てきた。

JR東海の広報は、「静岡工区の1日でも早い着手に向けて、地域の皆様のご理解とご協力が得られるよう、双方向のコミュニケーションを大切にしながら真摯に取り組んでまいります」とコメント。中央新幹線の早期開業に向けて全力で取り組む姿勢をみせる。

「2037年全線開通」のハードルは高い

ただ、「問題はまだ終わったわけではない」と指摘する関係者は少なくない。実際、JR東海がこの先直面するリニア工事の難題は大きく3つある。

1つ目は工期の問題だ。報道によると、政府は6月にも策定する経済財政運営と改革の基本方針で、リニアの東京―大阪間の全線開通を当初計画通りの「2037年」と明示する方向だ。だが、多くの関係者は「人手不足も続く状況下で、2037年の全線開通はとてもハードルが高い」と語る。

静岡工区は着工どころか、「トンネルの掘削に伴う事前のボーリング調査も、ほとんど何もできていない」(JR東海関係者)。

静岡県は環境問題などから、ボーリング調査を県境300メートルで止めるように要請。これにより調査は県境の約500メートルの地点まで進んだ状況で、昨年10月からストップしていた(5月16日時点)。

静岡県の北部にある南アルプスと大井川上流部の地下にトンネルを通す静岡工区は屈指の難工事と言われる。標高3000メートル級の南アルプスを貫き、地表からトンネルまでの深さ(土かぶり)が最大1400メートルに達する。「あの南アルプスのトンネルは、どのようなリスクが待ち受けているのかわからない」と、鉄道の事情に詳しいアナリストは話す。

ボーリング調査を終えても、その後の先進坑(地質調査や作業員の移動などに用いられる)や本坑を掘る際も、難航することが想定される。

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