最高益の三菱自動車、地域戦略で抱えるジレンマ 主力の東南アが苦戦の一方、"脇役"北米が好調
東洋経済オンライン / 2024年5月21日 7時40分
評価が難しい最高益だった。
三菱自動車工業が発表した2024年3月期決算は、売上高が前期比13.5%増の2兆7895億円、営業利益は同0.2%増の1910億円だった。売上高、営業利益ともに過去最高となるが、2度目の上方修正となる昨年10月の会社予想(営業利益2000億円)には届かなかった。中国事業関連損失が膨らんだことで純益は同8.3%減となった。
販売台数は2.3%減となる81.5万台。とりわけ、「成長ドライバー」地域と位置付けるASEANが8.8%減の23.9万台、第2の柱である「レバレッジ」地域とする中南米・中東・アフリカが9.3%減の13.6万台と、重視する市場で台数を落とした。
「タイとインドネシアという2つの市場の需要が大きく停滞し、旧型車の売り切り、新型車の立ち上げに苦慮した」。加藤隆雄社長がそう語るように、販売面でも苦労した1年だった。
円安の恩恵だけでなく、構造改革も結実
そうした中、わずかとはいえ増益を確保できたのは円安の恩恵が大きい。為替による利益押し上げ効果が378億円ある。ただ、これまで取り組んできた構造改革が実を結んだことも事実だ。
北米では、高価格SUV(スポーツ多目的車)「アウトランダー」などを軸に、過度な安売りを防ぐために販売奨励金(インセンティブ)に依存した形での販売手法を修正。日本では、ミニバン「デリカD:5」や小型車「ミラージュ」、軽EV(電気自動車)「eKクロスEV」の値上げに踏み切るなどした結果、「台当たり収益が向上している」(三菱自幹部)。
合理化を進めてきた成果も出た。
三菱自は、日産自動車の傘下となった2016年以降、欧州や中国などで積極的に生産能力を拡大した。しかし、計画通りには販売台数が積み上がらず、余剰生産能力を抱えて固定費負担が増加。2021年3月期には3000億円以上の最終赤字を計上した。
加藤社長は、2021年4月の社長就任以降、縮小均衡による筋肉質な経営体質への転換を図ってきた。欧州での自社単独による新型車開発の凍結に加え、ロングセラーだったSUV「パジェロ」を生産する国内工場を閉鎖し、希望退職を募集するなど固定費を2割以上削減する合理化策を実施した。
2023年10月には深刻な販売不振に陥っていた中国事業から撤退を決断。ステランティスと合弁で運営していたロシア事業についても、2023年6月までに生産の再開をしないことを決定。ロシアメディアによると、今年5月までに補償金約50億円を支払い、SUVの委託生産契約を終了した。こうした能力縮小が収益改善に貢献した。
中国勢の攻勢受けるASEANで伸ばせるか
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