「親が怖くて指導できず」底辺校教師の悲痛な叫び 東海地方で30年働く先生が語った事(第4回)
東洋経済オンライン / 2024年5月23日 7時50分
「私の高校では、生徒との密なコミュニケーションの頻度は大幅に減りました。ワークライフバランスなんて言いますけど、昔はワークもライフも境目が曖昧だったんですよ。
昔は、家庭訪問に行って、そのまま生徒に『ちょっとラーメン食いに行こうぜ』と声をかけたりしました。それで、自分の行きたかったラーメン屋に連れてって、『美味いな!』と感じながら、生徒といろんな話をして。『じゃあ明日、学校で待ってるからな!絶対来いよ!』などと指導していました。
あの時間は、自分にとっては仕事の時間でもあるし、プライベートの時間でもあった。でも、今そんなことをやったら、『生徒を勝手に連れまわすな!』って怒られますよね」
おおらかな時代だったからこそできた、立場を超えた人と人との交流も、規制が相次ぐ現代社会では、できなくなってしまったようです。
「最近はコンプライアンスを意識しなければならないからこそ、指導に対して、今までとは全然違う神経を使わなければならなくなりました。たとえば今は、家庭訪問の際に家に子どもしかおらず、親がいないときには、家に入ってはいけないんです。それは不法侵入だと言われてしまいます。
また、学校で生徒と話をしているときでも、その生徒の後ろ側にいる親のことを考えてしまいます。『今この生徒にこんなことを言ったら、後からここだけ切り取られて、親からクレームが来たりするんじゃないか』と思うと怖くなって、あまり強い言葉を使ったりすることができません」
生徒の心に一歩踏み込んだ指導は、家庭の問題に介入することにもつながる場合があります。
年長者や社会的地位の高い人たちの言動によるハラスメントが噴出しはじめ、社会問題につながるリスクが高くなってきた現在においては、そうした「熱血指導」は、鈴木先生としてもなかなか難しいようです。鈴木先生個人としては、昔と今の働き方について、どう思われているかを尋ねてみました。
「昔はよかったと一概に言いたいわけではありません。でも、生徒と本気でぶつかるということが、今は圧倒的に減ってきていますね。昔は、赤裸々なところまで踏み込むから、どっちも裸になれる、という意識がありました。
うまくいかなくて、『もう俺なんて死んでやるんだ!』と言ってくるような生徒がいて、それに対して『馬鹿なこと言うんじゃない!』と指導することは多かったですが、今はそんなことを言えるような間柄になるまでに至りません」
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