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「親が怖くて指導できず」底辺校教師の悲痛な叫び 東海地方で30年働く先生が語った事(第4回)

東洋経済オンライン / 2024年5月23日 7時50分

「決して体罰を肯定するわけではない」と前置きをされたうえで、先生はこう続けます。

「今では、生徒とぶつかることができる間柄になれないので、生徒の人生を大きく変えるようなこともなかなか言えませんよね。昔のほうが生徒も先生も喜怒哀楽を素直に表現していたのは事実です。それがなくなったというのは、生徒も先生もお互いに喜怒哀楽を表現する機会が減ったということにほかなりません」

喜怒哀楽を表現できない生徒たち

先生も生徒も感情を前面に出していた過去と比べると、現在ではそれを表に出すことができない子どもが増えたとも感じているようです。それは、コロナが到来したことも大きいようでした。

「私の高校の生徒を見ていると、喜怒哀楽を表現できない子どもたちが増えていると思います。昔よりも圧倒的に、喜怒哀楽を表現しない場合が多いのです。しかも、コロナを経たことでマスクを着けたままで会話することが多くなりましたからね。

相手の感情を読み取ることも、自分の表情を作って喜怒哀楽を表現することも、大きく機会が減りました。その要因も相まって、生徒たちは先生のことをあまり信頼できなくなっていると思いますし、先生も先生で、本当のことをなかなか生徒に言えなくなってしまっていますよね」

鈴木先生は自身の高校の経験を通して、今の教育現場は言いたいことが言えない環境になってしまった、と感じているようです。その中で鈴木先生が、生徒に言ってあげたい本音とは何か、聞いてみたところ、切実な回答が返ってきました。

「私が勤めている学校は地域の”底辺校”と呼ばれる高校なわけですが、その生徒の親は、結構な割合で、この高校の卒業生です。『自分は全然勉強もせずにこの学校に来て、なんとかなった。だから、自分の子どもも、この学校に入れておけばなんとかなるだろう』と考えている親も多い」

生徒の親自身の学びや意識も大切だ

「学校経営としてはそれでいいのかもしれませんが、本当は、生徒にその意味を考えてほしいんですよね。つまりは階層構造の固定化であり、格差の再生産が行われてしまっているんです。『君たちが親になる頃には、もうちょっと頑張って勉強して、ちゃんとした大学に行って、いい就職先に行って、子どもにちゃんと教育的な投資ができる余裕を持ってほしい。それで、君たちの子どもを、この学校に入れないようにしてほしい』って、目の前の生徒に対して言ってあげたいですよね。そんなことは、今は絶対に生徒に向かって直接は言えませんけど」

昔は言えていた本音が、言えなくなってしまった。鈴木先生の高校の事例を聞いていると、格差の再生産を助長し、次の教育困難を生んでいる、という面があるのかもしれません。これは根深い問題として、今後も考えていく必要があると言えるでしょう。

濱井 正吾:教育系ライター

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