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木造は石造より命が長い?プロが語る建築の本質 東洋の「木の文化」と西洋の「石の文化」の違い

東洋経済オンライン / 2024年5月23日 16時30分

世界最古の木造建築である法隆寺(写真:Toshiaki Kobayashi/PIXTA)

世界最古の木造建築である法隆寺。しかし世界には、西暦607年に法隆寺が建てられるはるか前から存在するピラミッドや大聖堂などがあり、それらはすべて石造建築です。本稿では新著『教養としての西洋建築』を上梓した国際的な建築家である国広ジョージ氏が、建築を通して見える「木の文化」と「石の文化」の違いについて解説します。

建築とは人が使う「空間」をつくること

人類が自らの手で「シェルター」を建築するようになったのがいつなのか、僕は考古学者ではないのでわかりません。おそらく石器時代の狩猟採集民は、天然の洞窟で身を守りながら暮らしていたのでしょう。

当然、これはまだ「建築」とは呼べません。洞窟そのものは、単なる自然の一部です。でも、それを人間がシェルターとして使い始めた時点で、そこにはのちの「建築」にとって欠かせない要素も含まれていたでしょう。

というのも、住居としての洞窟には何らかの「中心」があったはずです。「円の中心」のような幾何学的な話をしているわけではありません。そこで暮らす人間にとって意味のある中心、とでもいえばいいでしょうか。

たとえば火を燃やして食べ物を調理する囲炉裏のようなものがあれば、そこが「中心」です。それを家族みんなで囲み、寝起きを共にする。あるいは、洞窟の奥には一族の長老が座る場所が用意されていたかもしれません。

これも、ある意味で「中心」でしょう。このように何らかの「中心」が生じることで、洞窟は家族の一体感やヒエラルキーといった秩序を表現する空間になったわけです。

また、洞窟はセキュリティの面でも有効な空間でした。外敵が侵入する開口部は一方向にしかないので、同時に四方八方を見ることのできない人間にとっては、たいへん安全性の高い構造です。誰かが開口部のほうだけ警戒していれば、ほかの家族は安心して眠ることができたでしょう。

エジプトのピラミッドは「建築」とは呼べない?

建築にとって、「空間」はとても重要な要素です。人間が使うための空間をどのように構成し、そこにどのような意味を持たせるか──建築家は、それを考えます。建物をつくるとは、空間をつくることにほかなりません。

ですから、たとえ人工物ではない天然の洞窟であっても、人間にとって意味のある空間が生まれれば、それはある意味で建築に近いものと考えることができるのです。

逆に言うと、人間の手で建造したものであっても、人間が過ごす空間のないモニュメントのようなものは、少なくとも僕は「建築」とは呼びません。具体例としては、エジプトのピラミッドがそうです。

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