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「頭がいい人」ほど前例にとらわれる当然の事情 「失われた30年」につながる明治の官僚システム

東洋経済オンライン / 2024年5月23日 15時0分

そうして敗戦となった日本は、戦争という行為への反省こそ口にすることはあっても、教育については教育勅語こそ廃止したが、試験を優先する人材育成のシステム自体への反省は一切なく、明治から続いているやり方を令和の今も続けている。

優秀な子供たちが海外の大学へ

日本が凋落した最大の原因は、横並び主義で、ちょっと変わった、才能のある人間の頭を叩いて潰してきたことだと、私は考えている。

ある意味で特殊な人間を引き立てる思考や組織のシステムがあれば、"失われた30年"はなかったかもしれない。

みんなが同じことをやっているなかで、一部の特殊な人間がGAFAM的なものを生み出していた可能性はあっただろう。

しかし今ではそういう才能ある人たちは、もう日本にいても仕方がないと考え、外国へ逃げてしまう傾向が顕著だ。

だから日本はますますダメになってしまう可能性が高い。ここから再建するとなると、なかなか難しいと言わざるを得ない。

私立の偏差値の高い中学や高校では、東京大学や京都大学、早稲田、慶應という国内の"一流大学"を狙わないで、2024年度世界大学ランキングのトップ3(オックスフォード大学=英、スタンフォード大学、マサチューセッツ工科大学=ともに米)や、アメリカの東部のエリート大学とされるアイビーリーグ(ブラウン大学、コロンビア大学、コーネル大学、ダートマス大学、ハーバード大学、ペンシルベニア大学、プリンストン大学、イェール大学)など、海外の大学への進学を狙う生徒も増えてきているようだ。

東大や京大でも「仕方がない」

渋谷教育学園幕張(千葉県)のような国内トップクラスの進学校では、海外の大学への進学を目指す成績上位の生徒を対象にした特別なサポートシステムを組んだりもしている。

子供の将来のために海外の一流大学へ行かせたいという親も増えている。

しかし、今の円安状況では海外への進学は学費も生活費も大変だから、「世界ランク29位の東大や、同55位の京大でも仕方がないか」というようなことにもなっているようだ。

もちろん今はまだ、そういう親が極端に増えているということでもない。

しかし現在の日本の凋落傾向が続くようだと、近い将来に優秀な学生たちはみな日本から逃げて行ってしまうかもしれない。

海外の大学へ進学したからといって、成功するかどうかはわからないけれど、優秀な人材がこぞって海外へ行くことになれば、日本の未来が危うくなることは間違いないだろう。

池田 清彦:生物学者

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