勤勉が美徳の中国で「怠け者消費」が拡大する訳 家事よりも趣味や生活の質向上を重要視する人々
東洋経済オンライン / 2024年5月24日 9時0分
契機は中国人の春節の過ごし方の変化です。2000年代までの春節は、一家団欒の時間でした。親戚や知り合いが集まって一緒に普段よりも贅沢な料理を作って食べるのがメインで、百貨店も各種娯楽施設も休みだったのです。しかし経済発展とともに旅行やお出かけなど、春節の過ごし方は多様化し、百貨店も映画館などの娯楽施設も営業するようになっています。
そうした中、時間や手間をかけずに、おいしく贅沢な料理を作りたいと考える若者が急増しています。この需要に応えるために、従来の冷凍食品より作り立てに近い「預制菜」が登場したのです。現在は祝日以外の普段の利用も増え、市場規模が急拡大しています。同時に「預制菜」関連分野の成長性を見据えて参入するプレイヤーが増えているのです。
次に、利便性がキーワードとなる消費の増加です。これに関しては「即時リテール」の例を紹介します。
②日常生活の利便性にかかわる分野
即時リテールとは、消費者がオンラインで注文すると、リアル店舗がその注文に応じて商品を準備し、それをデリバリー業者などのプラットフォーマーが即時配達する方法のことです。ここでいう「即時」は大体30分前後ですが、多くのプレイヤーは分刻みで動き、とにかく素早い配達を目指そうとしています。
この即時リテールは2022年から東京で本格運用に乗り出した「Yahoo!マート」の仕組みと似ています。同サービスはZHDグループのアスクルと、LINEグループの出前館が持つ配達の強みを生かしたクイックコマースで食料品や日用品などの注文から最短15分で届けるという迅速さが最大の特徴です。「Yahoo!マート」を参照すれば、中国の即時リテールは身近にある移動型コンビニのような存在と認識してもよいでしょう。
招商証券の研究レポートでは、中国における即時リテールの市場規模は2020年の1510億元から年平均成長率30%以上で増え続け、2025年に1兆元を突破すると予測されています。
政策も即時リテール市場の拡大を後押ししています。中国商務省や国家発展改革委員会など12の部門が2021年5月末に「15分便民生活サービス圏の構築の推進に関する意見」を公布しました。都市部を中心にリアル店舗のデジタルトランスフォーメーションを加速し、住民に必要なサービスが15分以内に届けられることを目標にするとしています。
事例:出前サービスを配達サービスに変身させたフードデリバリー最大手「美団」
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