「中国企業ロゴ混入」で陥った自然エネ財団の不遇 新エネルギー基本計画の議論に参画できず
東洋経済オンライン / 2024年5月24日 7時20分
過去に日本記者クラブの喫茶室で行われた共同通信のインタビューでは、偶然にも大林氏の背後に中国の朱鎔基元首相の写真が映り込んでいたことから、こちらもネット上で「大林の執務室に中国首相の写真がある」というウソが拡散した。
「実は、ロゴ問題がネット上で持ち上がったとき、私はドイツに出張中で、Xでの炎上も、ドイツ時間土曜朝に内閣府から連絡がきて知りました。土日をはさんで、25日月曜の21時ごろに帰国するまで国内では対応できませんでした。その間にデマや中傷がネット上で広がってしまったのです」と大林氏は言う。
自然エネルギー財団と中国の関係で、疑われているポイントは2つ。
まず、2016年から2019年ごろにかけて、国際的非営利組織GEIDCO(Global Energy Interconnection Development and Cooperation Organization)で、自然エネルギー財団と中国国家電網が交流していたことがあげられる。GEIDCOの会長に中国国家電網会長の劉振亜氏、副会長に元アメリカエネルギー庁長官のスティーブン・チュー氏とともに自然エネルギー財団設立者・会長の孫正義氏が就任した。GEIDCOとは、どんな組織なのか。
「GEIDCOは、自然エネルギー活用のための世界的な送電ネットワークの実現を目指す非営利団体です。送電網建設の世界的企業であるシーメンス、ABB、日立、GEや、世界的な金融機関グループのモルガン・スタンレー、総合コンサルティング会社アクセンチュアなども参加しており、当財団も加わりました。中国国家電網とのかかわりは、もっぱらGEIDCOを通してのものです。人的にも資金的にも当財団とは関係ありません。たとえば、今回、3人の公認会計士に財団設立以来の収入について、すべての銀行預金通帳等の関連資料を調べてもらい、中国政府・企業からのものは含まれていないことが確認されました。ロゴ混入問題が起きた後、当財団はGEIDCOを脱退しました」(大林氏)
中国問題に警鐘を鳴らしてきた
もう一つが、GEIDCOの設立目的でもある国際間の送電網構想の立案と中国とのかかわりだ。自然エネルギー財団は2011年の設立以来、「アジア国際送電網(アジアスーパーグリッド・ASG)」構想を提唱してきた。このASGが中国国家電網を利するための構想なのではないか、という疑いだ。
「ASGは、東日本大震災後の日本の電力問題の解決策として提案したスーパーグリッド(直流高圧送電網)構築に向けた構想の一つで、ジャパンスーパーグリッド構想、東アジアスーパーグリッド構想に続く第3フェーズとして提案しました。中国国家電網とは無関係です。あくまで日本のエネルギー確保、価格低減が大前提であり、2012年の当財団のイベントでは、ASGのセッションに日本のエネルギー問題の専門家、有識者にご登壇いただいています。2019年に研究の報告書を公表し、ASGの調査を終えました。ただ、その後の国際情勢の変化で構想を進めていくのは現実的に難しくなり、いまだ構想の域は出ていません」(大林氏)
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