「中国企業ロゴ混入」で陥った自然エネ財団の不遇 新エネルギー基本計画の議論に参画できず
東洋経済オンライン / 2024年5月24日 7時20分
自然エネルギー財団はむしろ、中国による再エネ分野での独占や人権問題に警鐘を鳴らしてきた。
「中国は、太陽光発電設備の世界シェアの8割近く、蓄電池を構成するセルでは世界シェアの7割以上を独占しています。日本は両方とも1%前後にとどまっています。こうした中国依存は危険です。その問題性を『エネルギー安全保障の現実』というレポートで指摘してきました。中国政府のふるまいは外交面をはじめ重大な懸念を生じさせますし、ウイグルの少数民族に対する強制労働が太陽光パネルの生産にも及んでいることなどは容認しがたい、とレポートで指摘しています」(同)
一部メディアやネットの書き込みには、元経済産業省の官僚で政策シンクタンク代表を務める原英史氏も疑問を呈す。原氏は月刊『正論』6月号の「機能不全と劣化の政策決定システム」という論考の中で、自然エネルギー財団と大林氏の身に起きた騒動に触れている。
外国勢力の工作資料ではないかという声について原氏は「わざわざロゴをつけて工作活動を行う工作員がいるのか。もしいたら、よほどの間抜けだ」と一蹴。4月8日付で自然エネルギー財団が中国政府・企業との交流がごく限定的であったとする報告書を公表して以降も「影響力行使が疑われる」というのであれば、「少なくともそう主張する側は根拠を示す必要がある」と唱える。さらに、今回の騒動の背後で垣間見えるのは「河野政権の発足だけは何とか阻止したい電力業界の影だ」とも指摘する。
原氏は原発賛成派で、大林氏とは政策的な立場を異にするが、今回のような騒動で政策決定システムが劣化していくことに警鐘を鳴らした格好だ。
ロゴ混入問題について政府の調査が終結するメドは見えない。自然エネルギー財団が蚊帳の外に置かれたまま、新たなエネルギー基本計画の議論が進んでいくのだろうか。
自然エネルギー財団は、脱炭素化の方向で具体的提言をしている有力シンクタンクだ。日本のNGO(非営利組織)で、自前で電力シミュレーションをして公表できる組織はそう多くない。エネルギー基本計画の議論に、その知見は不可欠なのではないか。
山岡 淳一郎:ノンフィクション作家
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