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パスコ超熟「60ミリの子ネズミ混入」対応の成否 誠実ゆえに、消費者に過度の想像をさせた

東洋経済オンライン / 2024年5月24日 18時30分

なお自主回収対象に該当するサンプル品の細菌検査をしたところ、「いずれも一般生菌数は弊社基準値内であり、食中毒の原因となるような菌(大腸菌群・大腸菌・黄色ブドウ球菌・サルモネラ属菌)は未検出」だったとし、混入が申し出られた商品についても同様だったという。

続報がより嫌悪感を招いた

今回の混入事案をめぐっては、初報段階からSNS上でも話題になった。とくに衛生面に対する指摘が多く、「どんな小動物が入ったのか」などと心配の声が多数上がっていた。しかし続報が出てから、より「キツいな」といった反応は増している。

続報ではモニタリング強化や、超音波発信機の設置など、具体的な再発防止策も挙げられている。本来ならば、消費者が安心するはずのアナウンスなのだが、なぜか今回は、むしろ嫌悪感を招いているように見える。その理由を考えてみると、2つの可能性が見えてきた。

まずは「薄れかけていた記憶を想起させてしまった」ことだ。食品への生物混入は、それだけでインパクトが大きい。しかも、食べる機会が多い、人気の食パンでの事案とあって、「もしかして自分も買っていたかも」と気になる消費者は多いはずだ。

不祥事に限らず、あらゆる話題は、日を追うごとに薄れる。しかし、初報から2週間という「忘れはじめたころ」に続報が伝えられたことで、最初の印象が、ふたたび色濃く浮かんできたのではないか。まだ初報の記憶があざやかなうちに、経緯と再発防止策を発表していれば、そのぶんネガティブイメージからの回復も早くなるのではと思える。

もうひとつの可能性は、「詳細な描写により、より具体的にイメージしやすくなった」ことだ。たしかに初報の「小動物らしきものの一部」と、続報の「クマネズミの子ども(約60mm)」では、より詳細に伝えられているだけに、後者のほうがグロテスクに感じられる。

十分すぎる対応

とはいえ、ここまで「続報が抱える問題点」について書いてきたものの、企業広報の「炎上」対応を幾多と見てきた筆者からすれば、大手企業の異物混入対応としては、十分すぎるのではないかと感じる。一時的にはいい印象を残さなくても、長期的に見ればブランドイメージの維持・強化につなげられるだろうと考えるのだ。

不祥事対応をめぐっては、経緯説明も再発防止策も不十分なうえ、取材対応にも応じず、はたから見れば「うやむやにしたいのでは」と感じさせる企業も珍しくない。しかし今や、それで逃げ切れる時代ではない。SNS上には「誠実に向き合わなかった事実」が残り、ことあるごとに再燃される。

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