1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

パスコ超熟「60ミリの子ネズミ混入」対応の成否 誠実ゆえに、消費者に過度の想像をさせた

東洋経済オンライン / 2024年5月24日 18時30分

広報対応が不十分だと、その背景にある企業体質に、根本的な問題があると見なされる。ひとたび「スピード感がない」とか、「不都合な事実は隠す」といった印象を残してしまえば、それだけ尾を引いてしまうものだ。

その点、敷島製パンの発表には、誠意が感じられる。そもそも、食品メーカーにとって、異物混入による不祥事は、命取りになりかねない。とくに今回のように「生物混入」となれば、より消費者の忌避感は増す。

かつて、とあるカップ麺にゴキブリの混入事案が発生し、その後の広報対応をめぐり「大炎上」が起きた。当該企業は販売休止後、製造ラインを一新して衛生面を確保したうえ、ブランディング面でも「チャレンジングな期間限定商品」を立て続けに出すことで、これまでになかった話題性を集めているが、騒動から約10年を経てもなお、完全にネガティブイメージを払拭するまでには至っていない。

誠実すぎたゆえに、逆効果になりかねない今回の事案だが、ではどうすれば回避できたのだろう。例えば、「クマネズミの子ども」ではなく「げっ歯類の一種」といった表現であれば、まだ想像をかき立てずに済んだのではないか。

今回、SNS上では「クマネズミを画像検索した」との反応も見られた。調べやすくなったからこそ、より嫌悪感が増した消費者も少なくないだろう。先ほどの「記憶の想起」と通底する話だが、発表文や各社報道によると、異物の正体は5月8日時点でわかっていたのだから、その時点で伝えていれば、リカバリーも早かったと思われる。

「60ミリ」より「6センチ」表記のほうが良かった?

また「60ミリ」は「6センチ」に書き換えるだけでも、ちょっと小さめな印象を覚えないだろうか。よく冗談話で引き合いに出されるが、栄養ドリンクに含まれる「1000ミリグラム」の栄養素は、わずか「1グラム」にすぎないが、大量に配合されているように感じてしまう。その反対のパターンだ。

これまで見てきたように、企業が不祥事対応する際には、そのタイミングと表現も、しっかり見極めたうえで対応する必要がある。誠実であるに越したことはないが、「受け手がどう考えるか」と、一瞬立ち止まって思いをめぐらせることも重要なのだろう。

時には「社内や業界内、関係官庁向けの発表文」と「一般消費者向けの発表文」を出し分けるのも効果的かもしれない。今後に向けて、もっとも大切なのは、愛用している消費者に「食べても安心だ」と感じさせること。その観点から考えると、過度な不安を招いた消費者に対しては、より気持ちを解きほぐすような追加対応が必要なのかもしれない。

城戸 譲:ネットメディア研究家・コラムニスト・炎上ウォッチャー

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください