フランスで増加「環境問題で引きこもる子」のなぜ ジャーナリストの西村カリン氏に話を聞いた
東洋経済オンライン / 2024年5月25日 13時30分
2023年9月8日、私は当時の松野博一官房長官に、内閣官房長官記者会見で、広告を照明で光らせながら街中を走る「広告トラック」について質問しました。「政府は本気で節電をするつもりなら、電気の無駄遣いを規制すべきでは?」
官房長官の答えはこうでした。「広告等に関しては個別の事業者によって行われているものであり、いま政府としてコメントすることは差し控える」。民間企業の電気の無駄遣いに政府が介入できないのは仕方ないと言わんばかりでした。
身の回りにプラスチックがあふれているのも気になります。ビニール袋や商品のプラスチック包装、使い捨てのナイフやフォークを見て、日本に来た外国人はびっくりしています。ヨーロッパではすでに禁止されていますから。
日本は消費したものをリサイクルする意識は高いですが、資源の節約や省エネの意識は低いと思います。
日本では1970年代のオイルショックをきっかけに省エネ法が制定され、世界に先駆けてエネルギー問題の解決に役立つ技術開発が進みました。優れた省エネ家電もたくさん生まれました。でも、どこかで環境意識が低くなってしまったように見えます。残念です。
──日仏の若者の環境意識に差があるのは、学校で教える内容に違いがあるからでしょうか。
大きな違いはないと思います。水や電気を大事にしましょう、ゴミは分別して捨てましょうと教えるのは、日本の学校もフランスの学校も同じです。
それなのに環境意識の差が出るのはなぜか。学校で教わることと実際の社会に「矛盾」があるからだと私は考えています。
たとえば、学校では節電しようと教わります。でも、渋谷のスクランブル交差点に行けば大型ビジョンやライトアップされた看板だらけで、広告トラックが走り回っている。大人が節電していないんだから、子どもの自分が声を上げてもどうにもならない。節電しなくていいと思っているのではないでしょうか。
──フランスにはそうした矛盾はないのでしょうか。
フランスでは、矛盾があれば若者が指摘します。実際、夜間に看板の照明がついたままなのはおかしいと感じた若者が、勝手に店の看板の電気を消して回ったことがありました。でも、それで大人が怒ることはありません。むしろ若者の行動のおかげで大人の意識が変わり、ルールまで変わりつつあるんです。
日本で若者が同じことをしたらどうでしょうか? きっと大人は怒るでしょうね。「確かに地球に優しいけれども、勝手に電気を消すのはよくない」と言うと思います。
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