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消失危機!「輪島塗」は復活できるのか【後編】 「街はまるで時が止まっている…」現地を取材

東洋経済オンライン / 2024年5月26日 8時1分

震災は、輪島が誇る伝統工芸に深刻な被害をもたらした。しかし一方で、「すべてが破壊された今だからこそ、業界が抱える問題を解決する一歩を踏み出せるのでは」と、赤木さんは前向きに考える。

漆器の美しさの重要な要素として器のフォルムがある。漆器は古くから神事にも使われ、その形が整えられてきた。美しいフォルムは代々技術を受け継いできた木地師にしか作り出すことができない。

しかし、高度経済成長期を経て豪華絢爛な蒔絵を施した数十万円で売られる高い器が主になり、下地を作る職人に光が当たらなくなっていたというのは先に書いたとおりだ。

その下支えの職人がいなければ、輪島塗は消滅してしまう。すべてが崩れた今だからこそ、逆ピラミッドの構造を変えて彼らに光を当て、正当なお金を渡したい。

そう考えた赤木さんは、輪島塗の復興の第一歩として、「小さな木地屋さん再生プロジェクト」を独自に立ち上げた。

独自に立ち上げた「独自の再生プロジェクト」

「このプロジェクトは、震災後被災して建物が全壊していた木地師の建物を再建し、仕事ができる環境を、寄付金を募って作ろうというものです。輪島はいまだに人々が生活する最低限のインフラや住宅でさえ支援がどうなるか不確定な状況。輪島塗のための支援や補助金を待っていたら、職人がいなくなり未来はない。自分でできることをするしかないと考えました」

被災した職人さんと連絡が取れない中、1月下旬、最初に連絡が取れたのは挽物師・池下さんのお嬢さんだった。仕事場が半壊したと聞き、すぐに崩れた建物を訪ねた。

「86歳の池下さんと話をしたら、まだ職人として仕事をやりたいと言ってくれた。だからなんとかしてここを再建して、輪島で最初に立ち直った輪島塗の工房として光を当てたかった。改めて木地職人の方の仕事の大切さを知ってもらう場所にしたいと思いました」

池下さんは、江戸時代から続く木地屋の職人だ。輪島塗に長きにわたって携わり、代々技術を継承してきた池下さんの工房を再建したい。その思いを赤木さんはSNSに詳細に載せ、寄付を募った。

2月17日にSNSで寄付を呼びかけたところ、一度でなんと1212万4056円が集まった。ここから工房の工事費用750万円(振込手数料660円)、新設の轆轤(ろくろ)が48万1800円(振込手数料660円)を捻出した。

岡山の知り合いの大工チームの好意もあり、作業は急ピッチで進行。3月28日に新しい工房が誕生し、早速池下さんは木地師の仕事を始めることができたのだ。

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