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消失危機!「輪島塗」は復活できるのか【後編】 「街はまるで時が止まっている…」現地を取材

東洋経済オンライン / 2024年5月26日 8時1分

残金の414万936円は、2人目の木地屋再生プロジェクトに使用する予定だ。「第2弾は、輪島に一人しかいない荒型師の山下さんに声をかけています。彼は仕事を続けるか迷っている。でも、僕は一緒にやりたい。だから彼の仕事場を輪島に作れたらと考えています」。

輪島塗は輪島で作って「魂」が宿る

少しずつでも輪島に職人が仕事できる場所を作りたい。そう赤木さんを突き動かす原動力は“輪島塗は輪島の中で完結してこそ魂が宿る”という思いだ。

輪島塗が誕生したときから、輪島という土地がその美しい工芸品を育んできた。輪島にたくさんの職人がいて、近くで顔を見ながらみんなで器を作ってきた。だから輪島塗は“輪島”で作らないと成り立たないと赤木さんは話す。

自身の工房も4月16日から輪島で再開した。金沢に二次避難していた職人たちの住まいが輪島に再建されることになり、彼らの住まいの基盤ができたのだ。

「柳宗悦は、“美しい形は伝統の中にある”と言っています。輪島塗でいえば、輪島の土地で輪島の人が継承してきたもの。すなわち職人たちの技術、知識、体の中にいい形がある。僕はそれを引き出し、器にしているのです」

とはいえ、まだまだ輪島塗業界の現状は厳しい。「輪島漆器商工業共同組合」に加盟している103社のうち約8割の事業所が全壊、もしくは半壊、そして12社は火災で消失した。

未来がはっきりと見えている業者は皆無といっていいだろう。

街はまだ時が止まっているかのよう

街は4カ月もたっているのに、まるで時が止まっているかのよう。

「輪島の土地と人が繋いできた美しき工芸を絶やしたくない」。それは輪島塗に携わる人皆が心から思っている叫びだ。

しかし、それには一刻も早く職人たちが働く場所の再建と、器を作る環境が必要。国の補助や施策はまだ時間がかかりそうだ。

その間に別の仕事について、輪島塗の仕事を辞めてしまう職人がいたとして、どうして責められるだろうか?

けれど、職人がいなければ、輪島塗の未来がないのも事実なのだ。

荒野となった街に、多くの支援金で再建された池下さんの新しい工房は、輪島塗職人の未来を照らす小さな光だ。

赤木さんは、これからもできる範囲で職人の働ける場所を作り続けていきたいと話す。

*この記事の前半:消失危機!「輪島塗」は復活できるのか【前編】

山路 美佐:食と旅の編集者

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