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年金生活者たちの「実は優雅な暮らし」の実態 「家計調査」から見えてくる意外な懐事情

東洋経済オンライン / 2024年5月26日 10時0分

(写真:Xeno/PIXTA)

年金生活者の年金平均月額は約20万円だ。この他に配偶者の収入などがあり、世帯としての収入は、月25.5万円程度となる。他方、支出月額は、食費7.6万円など約28.6万円と、経済的に優雅な生活を営んでいるように見える。昨今の経済現象を鮮やかに斬り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕するーー。野口悠紀雄氏による連載第121回。

日本でも普通になった「年金生活者」

「年金生活者」という言葉を私が初めて知ったのは、学生時代にドストエフスキーの小説を読んだときだ。そこには、『罪と罰』の主人公ラスコーリニコフの母親プリヘーリャなど、年金生活者が何人も出てくる。当時の日本では年金だけで生活することなど考えられなかったので、大変興味を引かれた。

それから60年以上経ったいま、日本でも年金生活者は普通の存在になった。私の周りにも年金生活者は大勢いる。しかも、彼らは、ドストエフスキーの小説に登場した年金生活者とは違って、経済的に優雅な生活を営んでいる。

では、その人たちはどれだけの年金をもらい、どれだけの生活費を使い、そしてどれだけの資産を持っているのだろうか?

これを直接、相手に尋ねるのは、なかなか難しい。実際、「同窓会やクラス会で、年金額を話題にしてはいけない」と言われる。自分より年金が多い人がいると、心は穏やかでなくなるからだ。

しかし、年金生活者がどれだけの年金をもらってどのような生活をしているかには、誰しも興味がある。そして、その情報を入手する手段はある。個々の具体的な人の年金額ではなく平均的な数字だが、「家計調査」を見れば、かなりのことが分かるのだ。

ただ、ちょっとしたノウハウが必要だ。家計調査自体はよく使われる一般的な統計なのだが、年金生活者の実態を知りたいとなると、それを示している表がどこにあるかを見つけ出すのは容易でないからだ。

公表されている家計調査の統計表には、さまざまな観点から分類されたきわめて多数のものがあり、しかも、それらがあまりうまく整理されていない形で提示されているので、初めて見る人は、混乱状態に陥るだろう。

年金生活者の最新のデータは、次のところにある。「2023年、家計調査、所得支出編。第3-12表、(高齢者のいる世帯)世帯主の就業状態別、二人以上の世帯」を検索語として検索し、「第3-12表」を開く。

ここには、多数の項目が示されているのだが、そのうち「65歳以上の者がいる世帯(世帯主が65歳以上、無職世帯)」を見る。これが、ほぼ年金生活者の概念に一致すると考えてよいだろう。

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