とにかく明るい「枕草子」清少納言が悲劇隠した訳 後世に名を残す名作、執筆し始めたきっかけ
東洋経済オンライン / 2024年5月26日 7時40分
しかし、そんな清少納言も、月日が経つにつれて、宮中での生活に慣れてきたと思われる。『枕草子』では、一条天皇や定子のそばにいながら、必死に眠気と戦った自身の様子が描かれている。
そのときは、大納言の伊周が一条天皇のところにやってきて、漢詩について講義をしていたという。
「いつものように、すっかり夜が更けてしまった」(例の、夜いたくふけぬれば)とあるので、勉強熱心な一条天皇と伊周が学問について話し出したら、止まらなかったらしい。
眠くなった女房たちが1人、2人と抜けていくなか、清少納言はちゃんと残っていた。だが、「ただ一人、眠たいのを我慢してお控え申し上げていたのですが」(ただ一人、眠たきを念じて候ふに)とあり、かなり睡魔と格闘していたようだ。
「ほかの女房がいるならばそれに紛れて寝てしまうのですが」(また人のあらばこそは紛れも臥さめ)と、出遅れて退出できなかったことを、後悔しているあたりも面白い。
先に限界が来たのは、ほかならぬ一条天皇だった。「柱によりかからせ給ひて、すこし眠らせ給ふ」とあるように、柱に寄りかかって眠ってしまったという。
すると伊周は「もう夜も明けたのに休んでしまっていいのでしょうか」(「今は明けぬるに、かう大殿籠るべきかは」)と寝ている一条天皇に冗談を言って、妹の定子も「ほんとにね」(「げに」)とほほ笑んだという。
こんな兄と妹のほほえましいやりとりが見られたならば、清少納言もがんばって起きていた甲斐があったというものだろう。しっかり『枕草子』のネタにもしている。
『枕草子』は伊周と定子の思いやりから生まれた
伊周は「我が世の春」ともいうべく、目覚ましく出世しているだけあって、振る舞いにもゆとりがあり、自信に満ち溢れている。
この時点では、いつかは伊周が父の道隆のあとを継いで関白となると、周囲も考えていたに違いない。伊周自身も「自分が関白になり、一条天皇と妹の定子の若き夫婦を支えなければ」と大いに張り切ってたことだろう。
清少納言による『枕草子』が誕生したのは、そんな兄・伊周の妹・定子への思いやりがあってのことだった。
あるとき、伊周が一条天皇と定子に紙をプレゼントした。当時、紙は高級品だっただけに「何を書こうか」とずいぶん盛り上がっている。定子はこう言ったという。
「この紙に何を書いたらよいかしらね。帝は『史記』という書物をお書きになられていますわ」
これに対して、清少納言は『史記』から「敷き」を連想して「敷き布団といえば……」「枕でございましょう」と答えたところ、定子から「それでは、そなたにあげよう」と紙をもらうこととなり、清少納言は『枕草子』を書いたのだという。
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