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投資の視点で「良い会社」を判断するポイント 「売上」や「財務状況」だけでは実態はわからない

東洋経済オンライン / 2024年5月27日 9時0分

たとえば、来期に売上のお金が入金される予定であるが、顧客への商品の販売は当期中に完了しているので、当期に売上を計上するケースが挙げられる。

この処理は、不正に行なうものではなく、会計上のルールに基づいてなされる正当な処理だ。しかし、このような処理が可能になることで、会社のマネジメントは売上の計上タイミングをある程度決定することが可能となり、よってそれに基づき計上される利益は「質が低い」と判断される場合があるということだ。

なお、アメリカの南カリフォルニア大学教授Richard Sloanは“Do Stock Prices Fully Reflect Information in Accruals and Cash Flows about Future Earnings?”(1996)のなかで、アクルーアルが将来の投資リターンと関係があるという検証を行なった(すなわち、アクルーアルが少なく、利益の質が高い会社への投資のほうが、投資リターンが高かった)。

これは、アクルーアルが高い会社は自社の売上や利益を短期的に高く見せようとし、結果としてその後、高い売上や利益を維持できない(実際に現金が入ってくる売上や利益ではないため)ことで、株式市場を失望させてしまうケースがあるためだ。

「収益性」こそがビジネスの本質

このように、クオリティといってもインデックスプロバイダーごとにその考え方や使われている特性が異なり、また、各社とも、何か単一の特性でクオリティを測定しているわけではなく、3〜4個の特性を組み合わせて総合的にクオリティを測定していることがわかる。

しかし、どの指数においても収益性と資本構成(財務レバレッジ)の指標は共通して備えているので、両者はクオリティ戦略の必要条件といえよう。

さて、以上から、「収益性」と「資本構成(財務レバレッジ)」が最も一般的なクオリティ投資の指標であると考えられるが、ここでは、「収益性」にフォーカスを当てることとする。

なぜならば、「収益性」はビジネスの本質に起因する要素が大きい一方、「資本構成(財務レバレッジ)」はマネジメントの意思決定に依存する要素が大きいためだ。

負債を嫌う企業は「良い会社」と言えるのか

たとえば、日本企業は負債を抱えるのを嫌い、現金を保有することを好む傾向にあると言われている。

その場合、負債のない日本企業は、負債を利用して急速に成長する欧米企業に比べて質の高い会社だ、ということになるが、当然、そのようなことはない。

ただたんにリスクをとることを恐れて現金を溜め込む場合、将来の成長のための投資を怠ることとなり、会社の存続に影響を及ぼすかもしれない。

「資本構成(財務レバレッジ)」は財務的な安定性を測る重要な特性であるものの、会社のマネジメントの意思決定によって左右されるため、「良い会社」か否かを判断するうえでは「収益性」のほうが本質的な特性であると考えられる。

したがって、ここではクオリティ投資の視点から考える「良い会社」とは、「収益性の高い会社」であり、より具体的に表すと「高いリターンを長期的に生み出すことができる会社」であると定義する。

先ほど説明したROEの概念を含めて言い換えるのであれば、「高いROEから得た利益を、同水準以上のROEを得られるビジネスに、継続的に投資できる会社」がクオリティ投資における投資対象だ。

森 憲治:公認会計士、米国証券アナリスト

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