全国屈指の赤字路線「JR芸備線」存続への道筋は? 有識者が提言「赤字どころか、伸びしろある」
東洋経済オンライン / 2024年5月27日 6時30分
JR西日本は、山陽本線の広島駅(広島県広島市)と伯備線の備中神代駅(岡山県新見市)を結ぶ芸備線159.1kmのうち、備後庄原―備後落合―備中神代間68.5kmについて改正地域公共交通活性化再生法に基づく再構築協議を要請、3月26日に第1回目となる芸備線再構築協議会が開かれたことから、その存廃の行方に注目が集まっている。
ガソリン税で鉄道の維持を
一方で、広島県の湯崎英彦知事は、JR西日本が再構築協議を要請した区間について、「当初より芸備線の末端区間という認識はない。岡山県側の終点・備中神代駅では伯備線に接続しており、そこから鳥取県や島根県側に抜けることができる重要な鉄道ネットワークの一部を形成している」という考え方を示していたことは2022年9月20日付記事(広島県知事が主張「国はJRのあり方を議論すべき」)でも詳しく触れている。
2024年1月19日、芸備線の備後西城駅がある広島県庄原市西城町では、日本総合研究所主席研究員の藻谷浩介氏を招いての勉強会「どうする どうなる芸備線」が開かれた。集まった市民はおよそ80人。藻谷氏は市民に対して、「道路や空港、港湾、学校、下水道などは赤字でも廃止されないが、日本ではなぜか鉄道だけが赤字だと廃止議論が起きる」と、ほかのインフラとの違いに対して疑問を投げかけた。
藻谷氏によれば、日本では東京や大阪など大都市部でのイメージで鉄道は黒字経営が当たり前と思われており、過疎地の鉄道は廃線やむなしという風潮があるというが、「それは世界的にはおかしいこと」だと訴える。森林面積を除いた可住地の人口密度は東京や大阪は極端に高いが、欧州で最も人口密度の高いオランダでも島根県並みだ。ドイツやオランダの人口密度は島根県以下で、イギリスに至っては北海道よりも低い。それでも欧州各国には便利な鉄道網が張り巡らされているというのだ。
一方の日本では、人口密度が諸外国と比較してはるかに高いことから鉄道は世界でも珍しく採算が取れたため民間任せで運行されてきたが、JR西日本についてはコロナ禍を経て大都市部の利益で地方路線を維持できなくなり、廃線問題が表面化することになった。なお、日本国内の道路は大半が赤字となっているが、税金で維持管理を行うことが前提となっていることとは対象的だ。
こうした状況に対して藻谷氏が提示する解決策は、ガソリン税の税収を振り分け、諸外国のように税金で鉄道を維持することである。そもそも道路はガソリン税で維持管理され、空港については滑走路は自治体所有でターミナルビルは3セク所有、港湾も岸壁は自治体所有となっているのが通常であり、バス会社も航空会社も船会社もこれらの施設コストを全額負う必要はない。しかし、日本では鉄道だけは線路も駅も原則として鉄道会社の所有となっているが、世界ではこれらの施設は公共体が所有するのが一般的である。
備後庄原―新見間には伸びしろがある
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