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「不確実な報酬」で売上をアップする巧妙な戦略 不確実性による「ワクワク感」が行動を導く

東洋経済オンライン / 2024年5月28日 10時0分

彼は1930年に「スキナー箱」というシンプルな実験装置を発明した。何の変哲もない木製の箱で、中にレバーがついている。レバーを押すとエサが出てくる仕組みだ。

スキナーはこの箱を使って、ハトからラットまで、さまざまな動物の行動を観察した。

箱に入れられた実験動物たちは、最初のうちはレバーに関心を示さない。ところがしばらくして偶然レバーにぶつかり、エサが出てくるのを見て驚く。

ぶつかる、エサが出てくる、というパターンが何回か続くと、実験動物はレバーの役割を学習する。それからは箱に入れられたとたん一目散にレバーのもとへすっ飛んでいって、繰り返し押し始める。

スキナーはこの報酬システムを利用して、動物たちにさまざまな芸を憶えさせた。芸の内容はどんどん高度になった。どこまでさせられるか実証した驚異的なデモンストレーションでは、スキナーの教え子がウサギに1ドル硬貨を拾わせ、それを硬貨挿入口に入れさせている。硬貨を入れればエサが出てくるからだ。

スキナー自身は、もっとも強力なインセンティブを特定する研究にキャリアを捧げた。

その過程で、不確実な報酬のほうが確実な報酬よりも影響力が大きいことがわかった。決められた動作をすると毎回ご褒美のエサが出るのではなく、あるときは出るが別のときは出ない、という仕組みにしたほうが、動物たちはその動作をいっそう熱心に行うようになるのだ。

興味深い発見だが、これはラットやハトだけでなく人間にも当てはまることがわかっている。

人間でこの現象を証明したのは、シカゴ大学の心理学者沈璐希(シェン・ルーシー)による実験だ。

被験者87人を集めてタスクに挑戦させ、あらかじめ2ドルの報酬を約束した(確実な条件)。ただし一部の被験者には、1ドルの報酬か2ドルの報酬、どちらかが50%の確率で出ると説明した(不確実な条件)。

すると、報酬が確実だったグループでタスクを達成したのは43%だったのに対し、不確実だったグループでは被験者の70%が達成できていた。

不確実な報酬で売上がアップ

不確実な条件のほうが期待効用〔訳注 得られると予想される満足度〕は低かったにもかかわらず、こちらのほうがモチベーションをかきたてる力は強かった。「どっちが出るだろう」と思うワクワク感が、金額とは別の価値をもたらしていたというわけだ。

消費者になんらかの行動を促したいときも、不確実性を活用するといい。会員特典プログラムがあるなら、全員に毎回必ず同じ特典を出すのではなく、ランダム性を混ぜるのだ。

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