「社会をよくする投資」を知らなすぎた日本の代償 僕らが「マネーゲームのプロ」辞めて本を書く訳
東洋経済オンライン / 2024年5月28日 12時0分
でも今、人々の興味がどんどん「株価がどこまで上がるのか」という議論ばかりになっている。
鎌田:本当にそう思います。
──鎌田さんも、新NISA熱でみんながリスクやリターン、手数料のことばかり議論していることに対するモヤモヤが、今回の本を書くきっかけになったんですよね。
鎌田:思い返すと、鎌倉投信を立ち上げたときも「これでいいのかな」という思いが原点でした。
お金を増やしたいというのは健全なモチベーションなので、それ自体を否定するつもりはありません。でも、お金を増やすこと「だけ」を目的にするのは違和感があって。
もう70年も、リターンを縦軸に、リスクを横軸に取ってどのファンドの投資効率がいいのかが測られる世界が続いているんです。
たしかにその理屈は完成されているかもしれないけど、すべてが数字のみで測られる世界でいいんだろうか、社会という軸はないんだろうか、という違和感から、13年ぶりに書こうと思った本が『社会をよくする投資入門』です。
田内:著書の中でも「金銭価値だけで論理が構成されている」とありましたね。
鎌田:ええ。投資はよくも悪くも社会を動かす力があるので、リターンは金銭的な価値と同時に、社会的な価値にも目が向けられないといけないと思うんです。
田内:金銭価値がつくということは、所有権が移動するということなんですよ。逆に言うと金銭価値がついていないものは、所有権が移るとまずいもの。人権や参政権、空気だってそうじゃないですか。
だから金銭価値のあるものは、しょせん所有権が移動してもいいものであることを、みんなが理解しなきゃいけないんです。
値段のつかないものの価値を可視化するのは難しいですが、それに取り組んでいる1人が鎌田さんですね。
「社会をよくする投資」が「儲かる投資」になる条件
──実際のところ、「社会をよくする投資」は儲かりにくいものなんでしょうか。
田内:それは、消費者の価値観次第です。
企業が社会にとっていい商品をつくっても、消費者がそれを選ばずに安いものばかり買う状況では、会社は儲かりません。価値に対して妥当な価格を払う消費者が増えれば、ちゃんと儲かるようになる。だからこそ、消費者教育が大事なんです。
──「企業を応援するなら、別に投資ではなくてもいい」とnoteに書いていましたね。
田内:「貯蓄から投資にシフトしましょう」「投資で企業を応援しましょう」と言いますが、企業にとっての一番の応援は消費者になることだと思うんです。にもかかわらず投資だけが取りざたされていることにも、違和感があるんですよね。
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