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「行きすぎた円安は日本株にマイナス」は本当か 円安を問題視する空気が強まるとどうなるのか

東洋経済オンライン / 2024年5月29日 8時30分

1ドルが160円に近づいたあたりから、「過度な円安は日本株にマイナスだ」という意見も増えてきた。筆者はそれを否定する(写真:ブルームバーグ)

今回は日本株の先行きについて考えてみたい。まず、日本株に大きな影響を与える米国株について、 筆者は昨年末の「『しくじり議長』復権、米国株は2024年も上昇する」(2023年12月25日配信)あたりから、米国株に対してやや楽観的な見通しを示しており、今もそれは変わっていない。

米国株に過度な警戒が不要な理由

米国株は今年4月下旬に一時調整したが、その局面でも「5月以降の米国株は意外に底堅く推移しそうだ」(4月30日配信)で、堅調な株高を予想した。実際、5月15日には、インフレ指標が予想どおりに落ち着いたことを好感して、S&P500種指数などの主要株価指標はそろって史上最高値を更新した。

確かに主要指数が堅調だったいっぽうで、1~3月期のアメリカ企業の決算は強弱まちまちだった。株式市場の牽引役としてはやや物足りない結果だったと言える。しかし、程よい経済成長とインフレの落ち着きが続く中で、FRB(連邦準備制度理事会)の政策が機能していることは株式市場にとっては朗報であり、主要株価指数が最高値を更新したのは不思議ではない。

1990年代末のITバブル期と同様に、PER(株価収益率)などのバリュエーション(企業価値評価の指標)が割高になっていると懸念する向きもある。だが、筆者は当時のような株式バブルの領域には至っていないと考えている。インフレが制御され、年内にFRBが利下げに動くとみられるため、米国株に対して過度な警戒は必要ないだろう。

一方、米国株につられて欧州株も5月に史上最高値を更新するなど、世界的株高の様相が強まっている中で、日本株は3月22日に日経平均株価が4万0888円(終値)まで達したものの、5月28日現在では4万円を回復できておらず、日本株はやや出遅れている。

最近の日本株の相対的な弱さをどうみるか。いくつか要因が考えられるが、市場には、大幅な円安の進展は「日本経済への不安」を象徴しており、市場心理を冷やしているとの見方がある。確かに、円安で家計の実質所得が減っていることは個人消費の弱さの一因ではある。だが、円安が行きすぎているから経済成長が強く抑制されているのだろうか。

実際には、およそ30年ぶりに目に見えて起きている「物価高と賃上げの好循環」は、企業業績改善がもたらしているものだ。そしてその企業利益は円安によって押し上げられているのだ。

そもそも、アメリカ経済の堅調さが円安の主因なのだから、円安が日本株高を抑制しているとの見方は的外れであり、また通貨価値が下がっても、国力や日本の経済的な豊かさが低下しているわけではない。メディアで散見される「円安を憂う見解」は、人々の不安を煽るための情緒的な言説が多いのが実情で、最近の日本株の出遅れと円安には、ほとんど関係はないと筆者は考えている。

「円安=日本株高」の構図は不変

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