「タリーズ」現地での豆生産の知られざる取り組み 世界30カ国以上と取引するスタバとの違いは?
東洋経済オンライン / 2024年5月30日 13時0分
「5月10日に『ペルー ティピカ100% センフロカフェ』(150グラム、税込み2550円)と『ペルー ゲイシャ100% センフロカフェ』(150グラム、同2850円)』という限定豆を発売しました。ティピカ種の豆はクリーンで透き通るような味わいで、ゲイシャ種の豆はまるでジャスミンのような華やかで上質な酸味があります。『ペルー接ぎ木プロジェクト』で収穫し、コーヒーマスター(※)在籍店舗限定で販売しています」(渡邊氏)
※「コーヒーマスター」:タリーズの社内資格で、同社のコーヒーに関する知識に精通し、高度な抽出技術を持つ従業員のこと。現在全国で50人弱いる。
今回、店頭に並ぶまでの苦労は多かったようだ。少し専門的になるが渡邊氏はこう語る。
「約4年かけて、ようやく本格的に収穫できました。良質なコーヒー育成も目的で、ペルー接ぎ木プロジェクトは、ペルーに残る“ティピカ種のほか、ゲイシャ種、タビ種”という3つの品種で実施しましたが、本格生産できたのがティピカとゲイシャです。
農業で昔からある“接ぎ木”手法を用い、それぞれロブスタ種という丈夫な品種を土台につなぎ合わせました。初収穫は2021年でわずか数百グラム。コロナ禍で現地に行けず、日本に届いた豆をカッピング(品質と風味を評価する手法)した結果、まだ味わいの特徴が弱かった。それでも個性の違いがあり、木の成長に期待して栽培を続けてもらいました」
ちなみに商品名にあるセンフロとは、ペルー北部にある「センフロ農協」で、同国内から良質な豆が集まる。現地ではカフェも運営しているという。プロジェクト活動として負担をかけるので、タリーズは従来の原料調達費用に上乗せした金額を同農協に支払った。
「コーヒー豆は農作物なので、こちらの提案で収穫量が減ったり人件費がかさんだりします。先方に私たちの意見を反映してもらうことは難しいのです。そこで社内の上層部にもプロジェクトの意義を何度も伝え、会社全体の取り組みとして理解してもらいました」(渡邊氏)
アフリカ、中南米のコーヒー農園を訪ねて
今年4月、渡邊氏はコスタリカ、グアテマラ、タンザニアを訪れた。コーヒー農園があるのは人里離れた場所が多いので、産地訪問は快適な旅ではない。国際空港から小さな飛行機に乗り換えて地方空港に到着後、車で8時間かけて未舗装の道路を走る時もある。
現地関係者とのやりとりはタンザニアならスワヒリ語、中南米はスペイン語やポルトガル語だが、語学が堪能でなくてもコミュニケーションできるよう努力しているという。
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