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セブン&アイが北米責任者に「年77億円」払う理由 業績連動で膨張、報酬額は井阪社長の22倍に

東洋経済オンライン / 2024年5月30日 7時0分

中でも象徴的なのは2021年に実施した、当時のアメリカで第3位チェーンであったスピードウェイの買収だ。

日本のセブンーイレブン事業がコロナ影響で低迷する中、スピードウェイを連結化したことで2021年度から全体収益に占める海外コンビニ事業の比率が膨張。2020年度には収益ともに連結業績の3割程度だったSEIは、スピードウェイが初めて通期貢献した2022年度には売り上げにして全体の74%、営業利益の78%を占める規模にまで成長した。

あるグループ中堅幹部は「スピードウェイ買収を機にグローバル(企業)という意識が高まり、(資本市場からの目に)耐えられるようなガバナンス体制や事業構造改革の議論が本格化した」と話す。デピント氏はそんな一大案件の立役者と呼ばれており、別のグループ関係者も「デピントはとにかく優秀」と手放しで評価する。

今回デピント氏の報酬が膨らんだのも、このスピードウェイ買収によりSEIの規模が拡大したことが大きい。さらに2022年度の業績が当初の計画を大きく上回ったことが、同氏のインセンティブを引き上げた。

ただ、すべてが順風満帆というわけではない。今回の査定対象期間からは外れるが、昨2023年度はSEIにとっては逆風の強い1年だった。

2023年度の北米市場は、コロナ禍で実施されてきた多額の財政出動が順次停止され、そこに高インフレや金融引き締めが加わり、厳しい消費環境が続いた。中でも現地のコンビニの主要顧客である低所得者層への影響は大きい。既存店売上高の伸び率は、当初計画の4.5%増を大きく下回り、わずか1%増にとどまった。

また、SEIの主力商品であるガソリン販売で、1ガロンあたりの粗利額が前年を下回ったことも響いた。結局SEIの売上高はドルベースで前期比10%以上も減少した。

そんな状況下でも、存在感を見せつけたのがデピント氏だった。規模を生かしたメーカーとの原価交渉やオペレーションの見直しに取り組む「コストリーダーシップ委員会」を主導。実現した経費削減額は年間で3億ドル超に達した。その結果、円安の後押しもあり、2023年度は円ベースで4%以上の営業増益を果たした。

2024年度はさらに3.5億ドルのコスト削減を行う計画だ。取引先との交渉継続のほか、スピードウェイ店舗へ日本流「単品管理」を可能にするシステムを導入。逆にスピードウェイが得意とする効率的なガソリン物流の仕組みを、一部セブンーイレブン店舗に拡大するなど、統合シナジーの発現を推し進める。厳しい外部環境で減収(ドルベース)が続く見通しだが、増益(同)に持ち込む計画としている。

株主総会で報酬の議論は一切なし

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