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蒲タコハイ駅「看板撤去」の"納得できなさ"の正体 京急・サントリー施策にNPO法人が猛抗議

東洋経済オンライン / 2024年5月30日 19時30分

当然ながら、これらの駅名は、正式名称の改称で実現したわけではない。ただの広告出稿でなく、「副駅名への期間限定ネーミングライツ導入」として捉えると、運賃ばかりに頼れない鉄道会社においては、貴重な収益源にもなる。

実際に、ローカル鉄道においては、こうした収入を柱にしているケースもある。

また、駅ホームを「酒場化」する試みにも前例がある。味の素冷凍食品は2017年、JR両国駅でグルメイベント「ギョーザステーション」を開催した。ふだん使われていない「幻のホーム」で、客みずからがギョーザを焼きながら、ビールなどのドリンクを楽しめる内容で、コロナ禍の休止期間を経て、今年ひさびさに開催された人気イベントだ。こちらは、あくまで主役がギョーザであり、合わせる飲み物がアルコールとは限らなかったが、どこか今回の施策との近さを感じる。

そして、今回のイベントで、もっとも大きいポイントと感じるのは「地元商店会とのコラボ」だったことだ。地域を巻き込むことで、もはや営利企業の販促施策にとどまらず、「町おこし」の一環になっていたことは、しっかり考慮する必要があるだろう。

駅を起点にした「飲み歩き」イベントは、いまや珍しくない。筆者の地元である東京都杉並区においても、中央線沿線の立ち飲みやバー、居酒屋が参加した企画は、毎シーズンのように、各駅周辺で行われている。

本件に立ち返ると、きっかけは京急やサントリーのような有名企業発信だとしても、それに地元の商店が呼応した事実は大きい。公式サイトによると、大田区商店街連合会は、会員数7500店舗を有する。京急蒲田エリアのみならず、大田区全体に広がる地元団体が本腰を入れていたことは、少なくとも地域活性化の観点では、十分に評価するべきだろう(なお、先述の申し入れ書は、宛先が京急とサントリーで、商店街連合会は含まれていない)。

「うまい落としどころ」はなかったのか

こうした観点から見ると、「あっさり下げてしまったな」との印象は拭えない。もちろん最初にも書いた通り、アルコールが与える影響を肯定しているわけではない。ただ、それだけに「うまい落としどころはなかったのか」と感じるのだ。

申し入れ書で言及されているように、確かに酒類広告には自主規制がある。ただ、複数の酒類業界団体が共同で定めた「酒類の広告・宣伝及び酒類容器の表示に関する自主基準」をみると、公共交通機関において行わない広告としては、車体広告、車内独占広告、自動改札ステッカー広告、階段へのステッカー広告(駅改札内)、柱巻き広告(駅改札内)が挙げられており、この条文を忠実にとらえると、「駅名看板」の扱いは難しいところだ。

だからこそ書面では「これ以外にもさまざまな問題事例がある」と指摘し、ビール酒造組合や、その加盟社であるサントリーに「交通広告の全面自粛を含む抜本的な対策を求める要望書」を提出した過去に触れ、その要望書が抗議の趣旨だとしている。

今回のケースでは、最終的に看板撤去という着地点になったが、「広告出稿を下げれば、それでおしまい」ではない。トラブル発生時の対応には、必ず「なぜそうしたのか」の理由説明が、セットで求められる。

看板撤去によって「問題だ」と考える人々に対しては、一定程度の答えが出されたが、反対に「気にしすぎではないか」と感じる向きには現状、納得できる回答は示されていない。どこかの街で「第2のタコハイ駅騒動」が起きないためにも、論理的かつ客観的な対応が必要となるだろう。

城戸 譲:ネットメディア研究家・コラムニスト・炎上ウォッチャー

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