人気列車がなぜ?欧州「消えた有名特急」の面々 名称消滅「タリス」や会社自体が姿消した列車
東洋経済オンライン / 2024年5月31日 6時30分
ユーロスターとなった現在の旧タリスは、そのまま元の車両を使い、塗装も赤と銀のままで、ロゴだけをユーロスターへ変更して運行を続けている。サービス内容も、英仏間の列車とは完全に分かれており、親会社と名前だけが変わったというのが実情だ。
一方でユーロスター社は、現行車両を置き換える新型車両の選定に入ったと報じられており、それが英仏間で使用されているシーメンス製になるのか、TGVを製造するアルストム製になるのか、はたまた別のメーカー製になるのかが注目されている。
会社ごと消えた人気国際特急
「チザルピーノ」という列車名を聞いたことがあるだろうか。「ああ、そういえばそんな名前の列車を聞いたことがあるな……」という人はいるのではないか。少なくともその程度の知名度はあったと思う。
この列車はイタリアとスイスの間を結ぶ国際列車だった。観光旅行の訪問先では常に上位となる人気の2カ国を結ぶ列車だったこともあって、メディアでの露出が多く、日本でも子供向けの図鑑などでしばしば紹介されたため、海外の列車としては比較的知られた存在だった。
「だった」と過去形なのは、運行していたチザルピーノ社が解散し、列車そのものが消滅してしまったからだ。
チザルピーノ社は、イタリアとスイスの間を結ぶ国際列車を運行するため、イタリア鉄道とスイス連邦鉄道が半分ずつ出資して設立した合弁企業だった。それまで各国鉄が保有する車両の寄せ集めで運行されていた両国間の国際列車とは異なり、チザルピーノ社が保有する振り子式特急列車「ETR470型」を導入し、専用車両として運行した。
チザルピーノのETR470型は、自動車を筆頭に数々の名デザインを生み出した工業デザイナーのジゥジアーロがデザインを手がけ、白い車体に青と緑のストライプという斬新さで非常に人気が高かった。スイスとの合弁企業の車両でありながら、雑誌やガイドブックでイタリアの鉄道を紹介するとき、ほかのイタリアの車両を差し置いて、このETR470型が「イタリアを代表する特急車両」のような形で紹介されたこともあったほどだ。
利用客数も多く、のちに列車の増発が必要となったが、新型車両の投入が遅れたため一時期はチザルピーノの色とロゴだけを入れた一般の客車を運行していたこともあった。その後、メーカーからの納入は大幅に遅れたものの、2009年7月には待望の新型車両であるETR610型が営業を開始した。
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