人気列車がなぜ?欧州「消えた有名特急」の面々 名称消滅「タリス」や会社自体が姿消した列車
東洋経済オンライン / 2024年5月31日 6時30分
人気者だったチザルピーノだが、イタリア国内で発生する列車の遅延、さらにはETR470型そのものの信頼性の問題などが重なり、スイス連邦鉄道側が提携の解消を求める事態となってしまった。結局、2009年12月のダイヤ改正をもってチザルピーノは運行を取りやめ、設立16年目にして会社は解散した。
新型車両のETR610型は、営業開始後わずか5カ月でチザルピーノとしての営業運転を終えることになってしまった。保有していたETR470型9両編成9本と、ETR610型7両編成14本は、半分ずつスイス・イタリアの両国へ分配され、引き続き両国間を結ぶ特急列車として運行を続けた。ダイヤ改正以降は、それぞれの国が単独での乗り入れを行う形に落ち着き、以降は大きなトラブルが発生することもなく、現在は両国の列車が連結されて運転されることもある。
人気列車「消滅」今後もありうる?
前述のユーロスターに吸収されたタリスやチザルピーノなど、会社そのものが買収もしくは解散などによって消滅してしまうケースは、日本とは異なる上下分離方式を採用し、運行だけを担う民間企業が多く存在するヨーロッパならではの事情と言える。
事実、近年成長著しく知名度も上がった、イタリアの高速列車イタロを運営するNTV社は、最近になって海運大手MSC社が株式50%を取得しており、状況によっては会社組織のみならず、今後ブランドそのものががらりと変わる可能性も否定はできない。この先も、こうした突然の吸収合併や、解散による会社そのものの消滅ということがいつ起こっても不思議ではないだろう。
チザルピーノが消滅してから約15年、この列車を知らない人がいるのは不思議ではない。最近生まれた子供たちが物心つく頃には、タリスという列車も人々の記憶から忘れ去られた存在となっているかもしれない。
橋爪 智之:欧州鉄道フォトライター
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