1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

薬代は年間300万、アルツハイマー「新薬」の値打ち 発売から半年、薬が使えるのは患者の「2割弱」

東洋経済オンライン / 2024年6月1日 9時30分

レカネマブの副作用については、次のような報告がある。最も頻度の高い副作用は、発熱や関節の痛み、吐き気などのアレルギー反応だ。

このほかに、投与から半年程度は、ARIA(アリア:Amyloid-Related Imaging Abnormalities)と呼ばれる副作用が起こることがある。

「ARIAはアミロイドβをターゲットとする治療に特有の有害事象で、脳の血管の周りに水が溜まる浮腫、脳内の微小出血や鉄の沈着の2種類があります。多くは一時的であり、日本人における頻度は4.5%と、さほど高くありません」(岩田さん)

ARIAは自覚症状のない場合が多いため、「最適使用推進ガイドライン レカネマブ(遺伝子組み換え)」では5、7、14回目の点滴前に脳MRIを撮り、確認することになっている。副作用が見つかった場合、その程度によって、治療を一時休止または中止することもあるそうだ。

レカネマブは期待されるMCIや早期アルツハイマー病の新薬ではあるが、課題もある。その1つが、「進行した場合どうするか」という問題だ。

基本的にレカネマブは進行を遅らせる薬なので、多かれ少なかれアルツハイマーが進行する。中程度まで進行した場合はレカネマブの投与をやめ、既存のほかの治療を行うことになる。

もう1つの問題は費用だ。レカネマブの薬価は、1人あたり年間298万円(体重50キロの場合)と高額だ。高額療養費制度を使えば薬代は抑えられるが、それでも大きな負担であることに変わりない。

「このため、費用が高くなってしまう若年性アルツハイマー病の方には使いにくいと言わざるをえません」(岩田さん)

「猶予期間」をどう過ごすか

レカネマブを1年半投与すると半年ほど、3年間投与すると1年ほど進行を遅らせることができる。この意味をどう受け取るかというのも、人によって違うだろう。

岩田さんはこう話す。

「レカネマブがアルツハイマー病の進行を遅らせることによって、(重症になるまで)猶予時間ができる。この時間で、ご自身のやっておきたいことをしたり、その後の人生の過ごし方について家族や周囲と相談して手続きしたりしていただけたら、と思っています」

(取材・文/大西まお)

東京都健康長寿医療センター副院長
岩田 淳医師

日本認知症学会専門医、日本神経学会認定神経内科専門医、日本脳卒中学会認定脳卒中専門医、日本内科学会認定医、総合内科専門医。東京大学医学部附属病院脳神経内科「(旧)メモリークリニック」にてアルツハイマー病(AD)やレビー小体型認知症、前頭側頭葉型萎縮症等の疾患の診療を行ったのち、現在は東京都健康長寿医療センターへ赴任。専門は認知症性疾患、パーキンソン病、脊髄小脳変性症。

東洋経済オンライン医療取材チーム:記者・ライター

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください