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赤羽の団地「スターハウス」その意外な住み心地 全国に点在、戦後の貴重写真と共に歴史に迫る

東洋経済オンライン / 2024年6月1日 11時30分

「戦後の日本の集合住宅では、横に長い板状の住棟や、『テラスハウス』と呼ばれる2階建ての長屋のような住宅が一般的でした。しかし市浦健によって、上に伸びる1点集中型の新たな住棟が登場したのです」(海老澤氏)

全国に広がったスターハウス

1955年に第1号となるスターハウスが公営住宅に建てられると、翌年には日本住宅公団(現・UR都市機構)でも採用されて、全国に広がっていった。

不思議な形をしたスターハウスだが、気になるのはその住み心地だ。

スターハウスは3~5階建の中層住棟。吹き抜けの三角形の階段室を中心に、3辺それぞれに住戸が配置されている。

当時の日本では画期的だった

間取りは2DKか3K。3面が窓になっている住宅は、当時の日本では画期的だった。

そんなスターハウスを海老澤氏は、 “機能主義なもの”と捉えている。

「窓が多く開放的に作られているため、光が効率的に入り、風通しも良好です。多くのスターハウスは南に突き出るように建てられているため、1年を通して光がしっかり入ります。間取りは素朴ですが、居住環境の機能を満たす建築です」

住戸が隣り合わず独立しているため、声や生活音の心配をせずに暮らせそうだ。窓が多いことで家具の置きにくさが難点だと感じられるが、光や風が入る空間の住み心地は快適だろう。

海老澤氏によると、スターハウスの利点はそれだけではない。

団地に多い板状の住棟とは異なり、スターハウスは塔のような形をしている。そのため、狭い土地や傾斜地に建てることができ、土地を有効に活用できるのだ。

また、景観面に変化を与える側面もある。「単調な団地風景のポイントとなるよう、あえて目立つ位置に配置した例や、板状住棟を建てれば効率よく、多くの人に住宅供給ができるにもかかわらず、スターハウスを建てた例もありました。当時の建築家たちの景観に対する意欲的な姿勢がうかがえます」

土地を効率的に活用することも、景観を意識して配置することも、スターハウスだから実現できることなのだ。

ユニークな形のスターハウス、ちなみに「家賃」は高かったのだろうか。

「スターハウスは基本的に公的な住宅として建てられたもので、家賃もほかの住宅と同じように設定されていたと思われます」と海老澤氏。今は「スターハウスだから住みたい」と憧れて住まいを求める人がいるが、当時はあくまで集合住宅のひとつ。家賃で差をつけていたわけではないようだ。

ちなみに、赤羽台団地(日本住宅公団)のスターハウス竣工時の入居者公募の資料(2003年北区飛鳥山博物館『団地ライフ─「桐ヶ丘」「赤羽台」団地の住まいと住まい方─』展の図録より)によると、1962年公募当時、住宅専用面積46.99〜48.30㎡のスターハウスの家賃(概算)は9600円〜1万400円とある。

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