1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

赤羽の団地「スターハウス」その意外な住み心地 全国に点在、戦後の貴重写真と共に歴史に迫る

東洋経済オンライン / 2024年6月1日 11時30分

消費者物価指数を考慮すると、1962年の1万円は、2024年の約5.4万円に相当する計算になる。 5万円台の家賃と聞けば、スターハウスもほかの住宅と同じく、あくまで住まいの選択肢の1つだったことが想像できる。

建物の内部には三角形の階段室も

スターハウスの形の魅力は外観だけではない。建物内部にある三角形の階段室も見逃せない。

福島県福島市にある県営野田町団地にも、市浦健が設計した最初のスターハウスと同じ型の住棟が残っている。海老澤氏はこのスターハウスを訪れた際、階段室の雰囲気に驚いたと振り返る。

「正三角形の螺旋階段を見上げていると、ほかの集合住宅にはない不思議な感覚になりました。薄暗い階段室に天井から光が落ちてくる光景は、幻想的で神秘的でした」

スターハウスが建設された期間は、意外と短い。

日本住宅公団の団地では1960年代半ばまでの約10年間でスターハウスが集中的に建てられた。公営住宅では1970年代半ばで建設を終えている。

これは戦後の住宅不足が克服され、住宅の大量供給の必要がなくなったことや、居住面積にゆとりのある住宅が普及してきたこと、ほかの住宅に比べて建設コストがかかることが理由にあるという。

塔状の住棟タイプでは、星型よりも空間を効率的に活用できる、正方形のボックス型が主流となったほか、スターハウスが発展して高層化・拡張化した巨大な住棟も登場。戦後に建てられた中層のスターハウスの役割は終えたのである。

現存するスターハウスの数

取り壊され、徐々に姿を消しているスターハウス。海老澤氏に現存する数を聞くと、日本住宅公団(現UR都市機構)が建てたスターハウスは286棟のうち33棟が現存している。さらに公営住宅では現在約110棟が確認できているという。

筆者はスターハウスに憧れ、これまで何度も空き情報が出ていないか調べてきたが、近年見つけることはできていない。

団地の歴史を肌で感じることができるスターハウス。文化的な価値が認められ、世間での認知度も高まるなかで、保存の取り組みもさらに広がっていくのかもしれない。

スターハウスのユニークな形には、敷地や景観への対応に加え、居住性を考慮した機能的な意味もあった。戦後に建てられた住宅のなかで、令和のいまも独自の存在感を放っている。

鈴木 ゆう子:ライター

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください