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「SNS投資詐欺」の被害が爆増している根本原因 "メディア"や"広告主"の責任も問われている

東洋経済オンライン / 2024年6月1日 7時30分

「今こそ株式投資を始めよう」「株式投資の勉強を始めよう」などと、一見クリーンな広告が入り口となり、その奥に別の事業者をブリッジさせて詐欺行為を行っているケースが多い。審査段階でその全体構造をつかむことは難しいのだ。

そこで必要になるのが、警察による犯人の摘発強化だ。詐欺集団が「SNS型投資詐欺は割に合わないもの」と考えるように、捜査体制を構築する必要がある。警察庁では、2023年7月からサイバー犯罪や「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」に対応するための体制強化を行っているが、そこにSNS型投資詐欺も含め、摘発を進めていくことが重要になる。

広告主側は出稿をやめないのか

プラットフォーム事業者の詐欺対策を促進するうえで、もう1つ見逃してはいけないポイントがある。

プラットフォーム事業者を支えているのは広告収入だ。収入の柱になっているのは金融、自動車、食品など世界の名だたる企業からの広告だ。多くの大企業がSNSなどに莫大な広告費を投入し続けている。

小林議員は「今回の問題に関連して、多くの広告主企業と話をした。詐欺広告が載っているようなプラットフォームへの広告を出すのをやめないのですか、と。すると、広告をストップした途端に売り上げが減るので、やめるのは難しいという回答だった。まさにデッドロック状態。民間に任せておくと動かない。だからこそ、政府の役割が重要になっている」と指摘する。

確かに広告主の動きは鈍い。詐欺広告への対策が不十分なプラットフォームには広告を出さないことを検討する、と表明するだけでもインパクトは大きいのだが、目立った動きはない。広告主は、自らの意思で広告を出すプラットフォームを選んでいるため、詐欺広告と一緒に掲載されることを看過していることになる。

またSNS型投資詐欺の広告はプラットフォーム事業者が運営するアドネットワークを通じて、基準を緩めてでも、できるだけ大きな広告収入を得ようとするネットメディアにも掲載されている。

ブランドを重視する広告主が「質の悪い広告が掲載されているネットメディアには広告を掲載しない」と宣言すれば、たちまちメディアも襟を正すだろうが、多くの広告主は目先のクリック数に目を奪われ、全体のエコシステムが抱える問題には無頓着なままだ。

ネット広告の品質に関する議論は今に始まったことではない。

前出の長澤氏は2014年に28人のメディア関係者への取材をもとに『メディアの苦悩』を上梓しているが、指摘している問題の本質は変わっていないという。「一部のプラットフォームに依存することで生じる問題については10年以上議論してきた。詐欺集団まで入り込んできて底が抜けたようになってしまった今こそ、いよいよ変わらなければならない」と、広告主やメディアの軌道修正を訴える。

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