「富士山を黒幕で隠す」日本のダメダメ観光対策 「オーバーツーリズム」に嘆く日本に欠けた視点
東洋経済オンライン / 2024年6月2日 8時0分
オーバーツーリズムに対する日本の最近の反応は予想通りである。日本への観光客は2013年年間1030万人だったのが、コロナが明けた昨年は2500万人、今年は3300万人に迫るとみられている。これほど短期間に急増した国はなく、その結果、日本では通常の観光客が増える経緯を経ずにオーバーツーリズムが発生している状態にある。
残念なことに、国内当局とメディアは外国人観光客にすべての責任を押し付けるという最悪の反応を示している。岸田文雄首相は昨年、オーバーツーリズムとの闘いを、あたかも新型コロナウイルスや、エイズ(AIDS=後天性免疫不全症候群)のように国家的な大義名分として掲げた。
しかし、数字はこの論調を正当化するものではない。インバウンド観光客は日本ではまだ少数派だ。観光庁によれば、日本の旅行の72%は国内旅行客によるものである。
正確に言えば、世界はオーバーツーリズムよりも「観光の不均衡」に苦しんでいるようだ。観光客の95%が地球の5%に当たる部分しか旅していない。例えば、フランスでは80%の観光客が国土の20%しか訪れていない。
日本に関して言えば、メディアで常に紹介される数少ないスポットに集まる観光客に対して怒りが集中しているーー京都の祇園、ハロウィーンの渋谷、富士河口湖......。
「日本で取り組むべき本当の問題は、観光スポットのごくわずか、おそらく0.1%程度を占める約20の特定の場所(おそらく半分が京都)で、観光客のピークをどう管理するかだ」と、旅行会社ジャパン・エクスペリエンスのティエリー・マインセントCEOは言う。
特に時期的な偏りがある日本の観光
日本は地域的な不均衡に苦しんでおり、最近ではインバウンドの観光客がそれに拍車をかけている。
「日本人は長期休暇を取らず、週末や正月、ゴールデンウィーク、お盆などの祝日に小旅行に出かける。加えて、円安によって日本人も外国人も日本を旅行先に選ぶようになっている」とマインセントCEOは指摘する。観光の重要性を考えれば、政府は旅行需要をより分散させるために、学校の休暇に柔軟性を持たせるようなこともできるだろう。
1960年代以降、フランスは国土を3つのゾーンに分け、祝祭日の時期を少しずつ異ならせている。これにより、交通量とホスピタリティの需要が均等に分散され、ホテルや鉄道会社は需要に応えやすくなり、価格も柔軟に設定できるため、家庭の経済的負担が軽減される。
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