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「モノ言う株主」米名門百貨店の破綻招いた大誤算 長期的な目線で「企業価値の向上」を目指すべき

東洋経済オンライン / 2024年6月3日 15時0分

「モノ言う株主」の判断ひとつで会社を破綻させてしまうこともある(写真:まちゃー/PIXTA)

東証がPBR(株価純資産倍率)が低迷している上場企業に対し改善要請を強化したことから、「ROE(自己資本利益率)を高める経営」が再注目されている。そんな中で存在感を増しているのが「アクティビスト投資家(モノ言う株主)」の存在だ。アメリカの投資ファンドでアナリスト等を歴任した森憲治氏が、企業価値を高める際に「アクティビスト投資家」が果たす役割と、その功罪について長期投資の視点から考察する。

※本記事は森氏の著書『米国の投資家が評価する「良い会社」の条件 クオリティ投資の思考法』から一部抜粋・再編集しています。

アクティビスト投資家の「功と罪」

最近はキャピタルアロケーション(稼いだリターンをどのように使っていくのかという意思決定)に関して、アクティビスト投資家が影響を与えるケースも増えているので、ここで触れておきたい。

【グラフ】アクティビスト投資家の失敗により急落したJ.C. Pennyの株価

アクティビスト投資家とは、上場企業の株式を相当程度保有することでその会社に対して影響力を持ち、会社がどのように経営されるべきかについて意見する投資家のことを指す。

具体的には、経営陣の刷新や、事業の売却、リストラクチャリング、増配や自社株買いといった株主還元策の強化等を提案する。

アクティビスト投資家が会社の意思決定に影響を与えることには、賛否両論が存在する。

アクティビスト投資家が長期的な企業価値の向上を目指してマネジメントに意見をすることで、本質的な企業価値が株式市場に認知されるきっかけになる可能性がある。

一方で、アクティビスト投資家が短期的な利益の改善を求め、会社の長期的な成長を阻害する場合には、企業価値を棄損する結果にもつながる。

アクティビズムがポジティブであることを示す、少し古いデータを紹介する。

The Journal of The American Finance Associationが2008年7月に公表した「Hedge Fund Activism, Corporate Governance, and Firm Performance」によると、2001年から2006年のあいだにおけるアメリカのアクティビスト投資家のデータを分析すると、アクティビスト投資家が投資したことによって、投資した会社の企業価値が7%上昇し、その7%は長期的にリバースすることはなかったそうだ。

また、Harvard Law Schoolが2013年8月に公表した別の調査においても、アクティビスト投資家が投資を引き揚げてからの3年間のデータを見ると、投資をされていた会社の株価は上がり続けたとし、一部の批評家が指摘するような「アクティビスト投資家は長期的な成長を犠牲に短期的な利益を追求している」という証拠は見られなかったとしている。

J.C. Pennyの再建では大失敗も

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