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物流TOB合戦、佐川の「異次元の高値買収」で決着へ 株式市場は厳しい評価、問われる巨額買収の果実

東洋経済オンライン / 2024年6月3日 17時30分

SGHDが提示したTOB価格は、複数社の提案の中で飛び抜けて高い価格ではなかったという。写真左がC&Fの綾宏將社長、右がSGHDの松本秀一社長(撮影:尾形文繁)

物流業界で起こった「同意なき買収」に、異次元の高値を提示する対抗馬が現れた。

【図解】C&Fの業績は頭打ちが続く、問われる巨額買収の効果

5月31日、宅配便大手・佐川急便を擁するSGホールディングス(SGHD)は低温食品物流を手がけるC&Fロジホールディングスに対し、1株5740円で株式公開買い付け(TOB)を開始すると発表した。期間は6月3日から7月12日まで。完全子会社化を目的としており、買収額は1237億円の見通し。C&FはTOBに賛同している。

C&Fに対しては、小売業向けに3PL(倉庫業務から配送まで物流の一括受託)を展開するAZ‐COM丸和ホールディングス(丸和HD)が1株3000円でTOBを実施している最中だった。丸和HDがC&Fの同意を得ずにTOBに踏み切ったため、業界内外から注目されてきた同意なき買収。SGHDが圧倒的な高値で名乗りを上げた。

SGの提案は渡りに船

まず、C&FはSGHDから最高のオファーを獲得したと言える。2015年の上場以来、C&Fの株価は2000円を下回る推移だった。丸和HDが3月に買収の意向を示すまで3000円台をつけたことはなく、業績も明確に成長できているとは言いがたい推移だ。そこに1株5740円という高い評価がついた。

丸和HDの提案も十分なプレミアムを付けたものだったが、C&Fは前向きではなかった。丸和HDとは以前から経営統合を含めた協議を行ってきたが、2023年10月にシナジーが限定的なこと、企業文化が異なる点などを理由に検討を中止。にもかかわらず、2024年3月に丸和HDがTOBの意向を発表し、5月に実施したわけだ。

C&Fの綾宏將(あや・ひろまさ)社長は会見で「(丸和HDの提案に対して)最初からネガティブだったわけではない」と語ったが、当初から可能な限り、ほかの提携相手を模索していたのが本音のようだ。C&Fには事業会社とファンドなど最終的に4社の提案が寄せられ、検討してきた。

綾社長は同日開かれた会見で「SGHDの提案がもっとも高額で優れていると考えるようになった。営業体制や顧客基盤の活用、低温物流の効率化、国際物流の強化、メディカル分野の拡大。物流2024年問題への対応にも寄与する。主要顧客が離反する可能性も低い」とシナジーを強調した。

一方、SGHD側からすると、まさに異次元の高値づかみにみえる。丸和HDの買い付け価格1株3000円からは実に91%も高い。今期計画の1株利益から計算すると、PER(株価収益率)は49倍にもなる。前述のように、もともとのC&Fの株価水準はさらに低いのだ。

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