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薬物依存症者の「逮捕実名報道」家族が抱く違和感 過剰な報道が依存症者の社会復帰を阻むと懸念

東洋経済オンライン / 2024年6月4日 10時0分

薬物依存症者の実名報道について、報道各社で判断が分かれています(metamorworks/PIXTA)

薬物依存症者の回復を支援してきた施設「木津川ダルク」(京都府木津川市)の入寮者3人が覚せい剤取締法違反の容疑で逮捕され、一部メディアで実名報道された。

【写真】ギャンブル依存症者の家族も苦しむ

これを受けて薬物依存症者の家族会や支援団体は連名で、逮捕と報道の在り方を問題視する声明を発表。今回のような形で逮捕や報道がなされると、薬物依存の当事者たちをかえって支援から遠ざけてしまうとの懸念を表明した。

大きく取り上げられた逮捕・実名報道の影響

木津川ダルクの加藤武士代表によると、入寮者3人は5月8日、京都府警木津署に逮捕された。同署は別の薬物事件で逮捕された人の供述をもとに、約1カ月前に3人への任意捜査を始め、ダルクもその時点で再使用の事実を把握したという。

ダルクは、薬物依存症者の自発的な意思に基づく回復を支援する施設で、入寮者の行動や外出を制限することは基本的にはない。3人は任意捜査が入った段階で逃亡することもできたが、警察の事情聴取などに協力しながら薬物の再使用と向き合い、施設の提供する回復プログラムを続けてきたという。

加藤代表らが警察の対応を待っていたところ、同署から5月7日、「明日逮捕する」との連絡が入った。

「自分たちで出頭すると伝えたのですが、警察から『それはやめてほしい』と言われました」

さらに逮捕から約2時間半後、朝日新聞が先行して報道し、各社が追随したことで事件はよりセンセーショナルに扱われることとなった。

「朝日新聞からは前日にダルクの別の施設に問い合わせもあり、警察のリークがあったと推測されます。私たちは行政の依頼で、引き受け手のない出院者・出所者も受け入れています。なぜ出頭を拒み、大きく報道されるやり方をあえてしたのか、理解に苦しみます」

加藤代表は一連の報道によって、全国にあるダルクの施設が薬物使用を放置しているかのような誤ったイメージが拡散されてしまうことを懸念する。さらに「薬物依存に苦しむ人が『ダルクを頼ると、有無を言わさず警察に通報されてしまうのではないか』と考え、相談を思いとどまりかねない」とも指摘した。

また大手メディアのうち毎日新聞、産経新聞などが逮捕者を実名報道する一方、朝日新聞、読売新聞などは匿名で報じ、判断が分かれた。

罪を犯した以上、報道されることも含めて自分のしたことの責任を引き受けるべきだ、という意見もある。しかし、他人へ危害を加えたり違法薬物を取引したりせず、薬物使用のみで逮捕された依存症者については「制裁は裁判所の判断する量刑によって行われます。実名を報じ、社会的な制裁まで受ける必要があるのでしょうか」と加藤代表は疑問を投げかける。

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