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他人にお金を使う人の幸福度が上がるカラクリ 他人と繫がる重要性が刻み込まれた人間の脳

東洋経済オンライン / 2024年6月4日 17時0分

認知的不協和というのは、考えていることと実際の状況の不一致で心がモヤモヤすることです。

普通に考えたら、他人のためにお金を使いたくないものですが、実際に使ってしまっている。そこにモヤモヤが生じます。

人にお金を使うことは勇気がいることですし、痛みを伴いますが、自分は相手を好きだから、あるいはこういう行動をするのが好きだからと、自分の行動に、肯定的な「大義名分」を与えることで、そのモヤモヤを解消しているわけです。

結果、満足感を得られているから、幸福度も上がっているとも考えられます。

人のために動くポイントは〝具体的〞

同種の研究は、たくさんあります。たとえば、ヒューストン大学のメラニー・ラッドらの研究[3]では、人は自分のためにする行動よりも、向社会的行動をして、それを達成するほうが幸福感を覚えることが分かっています。

ちなみに、ラッドらは、幸福度を上げるポイントは、「具体的に人のためになるような行動」をとることとしています。

単に「人類の幸せのため」とか「地球環境のため」とか抽象的なものにしてしまうと、その判定基準が自分の中になかったり、対象が大きすぎたりして、自分の行動で「目的を達成できたか」が分かりにくくなってしまいます。

そのような達成度合いがはっきりしない行動をしてしまうと、幸福度が上がりにくくなる結果が出ているのです。

このような研究で面白いのは、科学で裏づけられた事象が、昔から伝わっていることが珍しくない点です。

「情けは人のためならず」ということわざがあります。これは、「人にかけた情けは巡り巡って自分に返ってくる」という意味ですが、私たちのご先祖様は、「人のためになること(向社会的行動)をすると、自分のためになる」とどこかで気づき、大切なこととして語り継いできたわけです。
これらを踏まえると、アクニンらの研究の内容が腑に落ちるのではないでしょうか。

他人のためにお金を使うのは、目的がはっきりしているうえに、手段も向社会的行動の中でも、特にシンプルで分かりやすいものです。つまり、「他人のためにお金を使った」その瞬間に、自分の目的は達成できたと脳が理解できる明確な行動をしているので、幸福度もしっかり上がるんですね。

週に1回でもいいから、「他人のために何かをする日」をつくる

他人にお金を払う以外に、他人のためによいことをする方法論もあったりします。カリフォルニア大学のソーニャ・リュボミルスキーら[4]は、「知らない人のコインパーキングの料金を払う」「献血をする」「友人の問題を解決する」「昔お世話になった先生にお礼状を書く」など、6週間にわたって週に5回の向社会的行動――すなわち〝一日一善〞ならぬ〝一週五善〞をした被験者と、特に何もしなかった被験者を比べる研究をしています。まず、幸福度を比べた結果、〝一週五善〞をした被験者のほうが高くなっています。

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