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映えスポットに変貌「横須賀」に何が起きたのか 建てない土地活用と前のめりな再開発事情

東洋経済オンライン / 2024年6月4日 11時0分

だが、それ以上に「前のめりさ」を感じるのが、京急線横須賀中央駅前での多数の再開発計画である。横須賀市では拠点市街地である追浜駅、横須賀中央駅、京急久里浜駅周辺の3つのエリアで建物更新を積極的に支援しており、追浜駅、京急久里浜駅周辺でもそれぞれに開発への動きがある。

そのうち、横須賀中央駅前のメインストリートである県道26号沿いでは、通りに面した13ほどのブロックのうちの1カ所ですでに再開発が完了。1カ所で解体工事が進展中で、2カ所で再開発準備組合が発足、3カ所で再開発協議会などの組織が立ち上がっている。これがすべて実現するとなると、駅前には高層建築物が並ぶ、丸の内のオフィス街と見まごうばかりの風景が出現することになる。

この背景には、市が2012年度に策定した『横須賀中央エリア再生促進アクションプラン』に基づく特別減税や、商業の活性化などを促すための奨励金制度がある。

特別減税は2013年に施行された条例によるもので、一定要件を満たす建物更新などの事業において、事業用途の施設(建物)にかかわる固定資産税、および都市計画税を5年間、最大90%減税するというもの。2015年に竣工した再開発タワー「ザ・タワー横須賀中央」はこの制度を利用している。

また、奨励金は商業施設、ホテルに対して出されており、商業の場合は営業床面積10㎡あたり20万円、ホテルについては宿泊可能人数1人あたり30万円が支給される。2021年に開業したホテルニューポートヨコスカは特別減税、2種類の奨励金制度をフルに使っている。減税、奨励金の大盤振る舞いで開発を後押ししようというわけである。

高低差が大きく、平地の少ない横須賀市で効率的に、中心部に居住者を集うには、タワーマンションは1つの判断である。再開発を検討している地域の中には1959年築の三笠ビルなどもあり、建物の劣化を考えると更新も不思議ではない。

だが、人件費や資材費高騰の現在はタイミングとしては微妙なところ。すでに解体が始まっている駅前の若松町1丁目地区はまだしも、それ以外の検討エリアで開発が実際に行われることになるか、数字的に合わないのではないかという噂も聞こえてくる。

例えば、大滝町1丁目地区では2014年に再開発協議会が立ち上がっているのだが、この場所では以前に一度、民間の開発計画が中止になっている。

現在、中心部では一般のマンション建設も進んでおり、価格は3000万〜6000万円(40㎡強~73㎡)ほどと急激に高騰する都心部に比べると手頃な印象である。また、2015年に完成したタワーマンションでは高層階の2LDK70㎡超が7000万円弱で出てもいる。買う側からすると比較的買いやすいわけだが、そのエリアに新築で、建設費のかかるタワーを供給する側から考えるとどうだろう。

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