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映えスポットに変貌「横須賀」に何が起きたのか 建てない土地活用と前のめりな再開発事情

東洋経済オンライン / 2024年6月4日 11時0分

しかも、複数棟が建つと考えると過剰な供給になる可能性も高い。地元にそれだけの市場があれば問題はないが、横須賀市の市民1人当たりの平均所得は323万円で、神奈川県下19市のうちで15位(令和元年度)。当然、地元だけでなく、広い範囲から購入希望者を集める必要があるが、横須賀市にそれだけの吸引力があるかどうか。

市内で郊外から中心部のマンションに住み替える動き自体はあるものの、価格面から高齢者が中心になっており、子育て世帯を呼びこみたいであろう事業者や、市の意図とは微妙にずれがある。

コロナ禍で地方に目が向くようになったと言われるが、2023年時点の資料「横須賀市の人口の動向」でみると2011~2021年の社会増減はほぼ横ばい。今後、社会増が見られれば別だが、今のところは移住に大きな期待はできない。

また、近接した立地に複数棟が建つとなると、タワーマンションの魅力の1つである眺望が得られない可能性も高い。

利便性の高い中心部に人口を集めるのは、地形的なハンディを補って行政コストを下げ、賑わいを生むという意味で面白い試みと言えるが、現在の市場や、状況下では難しく、事業が成立しなかったり、協議会や組合内部で合意できず延期に至る可能性もあり得る。

そもそも、余剰床を生み出してそれを売却することで事業費を捻出する市街地再開発事業の仕組み自体が、不動産価格を上げにくい地方都市において成立しなくなっているのではないかという考え方もある。

再開発は国からのさまざまな資金で成り立ってきた、あるいは、成り立っているように見えていたが、地方都市では今後はそうもいかなくなってくる。横須賀市の開発の今後の動向は、市街地再開発事業のこれからを考えるうえで1つの試金石になるだろう。

一方で、中心地の空虚さはなんとかしなくてはいけない、賑わいをと考えると、野比海岸の駐車場のような、建物を建てないで賑わいや、収益を生む方法はもっと検討されていいだろう。

その意味では「建てない土地活用」にいち早く取り組んだ横須賀市には、既存の市街地再開発とは異なる形でのまちの再生をはかる手を模索していただきたいものである。

中川 寛子:東京情報堂代表

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