アメリカとウクライナの足並みがそろわない理由 バイデンの「非満額回答」にゼレンスキーは大不満
東洋経済オンライン / 2024年6月4日 17時0分
2024年6月2日、アジア太平洋地域の防衛相らがシンガポールに集まる安全保障会議「シャングリラ・ダイアローグ」でスピーチを行うゼレンスキー大統領(写真・2024 Bloomberg Finance LP)
2024年5月末、アメリカのバイデン政権がウクライナ侵攻を巡り、大きな政策転換を行った。ロシアの核使用を招くエスカレーションを恐れる米国が、ウクライナに対してこれまで禁止していた、アメリカ製兵器によるロシア領への直接攻撃を部分的ながら容認したのだ。
この「部分的容認」が意味することは何なのか。これにより、戦局は大きく変わるのか。そして国際情勢全般への影響はどうなるか。
アメリカ製兵器によるロシア領内攻撃を容認
今回の決定の詳細は執筆時点で明らかになっていないが、2024年5月上旬から始まった北東部ハルキウ州北部へのロシア軍侵入攻撃に対抗するため、ウクライナにロシア国境州地域にある兵器・軍事施設への攻撃を認めるというのが骨格になっている。アメリカがロシア領に対し、その一部にせよ、自国製兵器による攻撃を、公然と容認したのは初めてとみられる。
一部国境地域にのみ攻撃を容認するとした今回の決定をみれば、ロシアとのエスカレーションを回避したいという、対ロ基本戦略を完全に放棄したとも考えにくい。
その基本は維持したうえで、アメリカ製兵器によるロシア領内への限定的攻撃は許容するという、異例の両にらみ姿勢であることは間違いない。
その線に沿って、慎重に攻撃をしてほしいというのがバイデン政権からウクライナへのメッセージだろう。
ではなぜ、バイデン政権はこのような部分的容認を決めたのか。それは先述したように、ハルキウ州北部の国境線から侵入したロシア軍による住宅地などへの執拗な攻撃の結果、住民の死者が増え、人道危機的状況になっていることが背景にあった。
この状況を早急に打開するため、ウクライナにロシア領内への攻撃を認めるよう欧州各国から緊急の要請があった。この結果、アメリカだけでなく、ドイツもハルキウ州に接したロシア領に限って自国製兵器でロシア領攻撃を認めた。
しかし、今回の部分的容認の決定にゼレンスキー政権は不満だ。もともと部分容認決定は、保有するアメリカ製兵器によるロシア領内の攻撃を全面的に認めてほしいとのゼレンスキー政権からの必死の要請に対する、バイデン政権からの「非満額回答」だったからだ。
なぜ「非満額回答」なのか
ウクライナはすでに自国製の攻撃用ドローンで、ロシア領内深くにある軍事施設や石油精製施設などを攻撃している。しかし、ドローンでは破壊力が小さいため、最長射程300キロメートルのアメリカ製長距離地対地ミサイル「ATACMS」(エイタクムス)による遠隔地への攻撃も認めるよう求めていたが、結局ワシントンは認めなかった。
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