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別れた夫の悪口を子どもに言わなかった母の思い 2人の「ひとり親の子育て」を通じて感じたこと

東洋経済オンライン / 2024年6月5日 15時0分

大阪市立大空小学校の初代校長の木村泰子先生が、忘れられないと語る親御さんのエピソードをご紹介します(イラスト:本田亮)

特別支援学級の対象となる子どももそうでない子どもも、すべての子どもがともに学べる学校、大阪市立大空小学校の初代校長の木村泰子先生。

そんな木村先生の、「自分を支える何か」がほしいすべての人に向けたメッセージが詰まった本『お母さんを支える言葉』より一部抜粋し、3回に渡って掲載します。

第2回は、木村先生が忘れられないと語る親御さんのエピソードです。

ほめて成長するのは、親も同じです

忘れられないお父さんがいました。

父子家庭で息子と2人暮らし。母親は好きな男性ができて、息子がまだ低学年くらいの頃に家を出ていったきりでした。

息子が小学校を卒業して数年後、父親が突然職員室に現れたんです。

「校長先生、息子が高校を無事卒業してん!」と満面の笑顔。傍らには、すっかり大人の顔になった息子がいました。

「えー、おめでとう!」

私は、子どものほうを向いて笑顔を返したのですが、それを見て父親は、

「先生、子どもちゃう! 自分をほめて!」

って言ったんです。

私はハッとして、「父ちゃん、よくがんばったなー!」って、その父親の頭をなでました。それを見て、その場にいた職員室のみんなが、涙を流していました。

問題児ならぬ問題"父"の存在

このお父さん、男手一つで子育てをしていて、苦労も多かったのですが、同級生の親ともめごとを起こすこともありました。

ただ、親はどうであれ、子どもの学校生活や学びは、守らなくてはいけません。だから、教職員も同級生の親たちも、息子とはずっと話をしていましたし、息子の話には耳を傾けていました。

「父ちゃん、こんなことしてん」ってしょんぼりして打ち明けられたときは、「そうか。父ちゃんも必死やねんな。でもさ、いろいろ思うけど、あんたはまだ子どもやん。だから、大人(父ちゃん)のことは、ほっとき。大空小にはこれだけ大人がいてるやん。困ったら誰にでも助けを求めや」って。

同級生の親たちも最初はひいたり、「あんな親、どこか行ってほしい」という態度すらもうかがえました。でも、父親が何か問題を起こして、やり直し(反省)をするたびに、そのことを周囲で共有しました。

最初は眉をひそめていた人たちも、次第に「あのお父さんも、困ってんねんな。もう納得したから、大丈夫」と、その親子を見守るようになっていきました。

そんな問題児ならぬ“問題な父"だった人が、無事に一人息子を高校まで卒業させることができたのです。息子は就職まで決めて、「校長先生、お金稼げるようになったから」と、初めてのお給料で抱えきれないほどたくさんのジュースを買ってきてくれました。

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