「それでも日本株は上昇する」と言える2つの根拠 景気はよくないのに株価が高いのはおかしい?
東洋経済オンライン / 2024年6月5日 9時0分
内訳を見ると、輸出の6割を占める電子製品と情報通信技術製品(ICT)が共に増加。特に前者の電子製品は同プラス22.7%と約2年ぶりの高い伸びとなった。後者の情報通信技術製品もプラス8.4%と、はっきりとしたプラス領域に回帰している。
統計発表元である台湾経済部は、今後のリスクとして米欧の高金利の影響、米中の貿易紛争、より広範な地政学的不確実性などを挙げているが、「AIの加速度的成長が半導体やサーバーのサプライチェーンへの需要を後押しする」(ロイター通信)と今後に手応えを感じているようだした。
また、この間の台湾の電子部品の出荷・在庫バランス(出荷と在庫の前年比差分)を見ると、需給が引き締まる方向にあることを示している。最新値である2月の値は出荷がプラス5.5%、在庫がプラス10.5%となり出荷・在庫バランスは明確なプラス圏にある。
世界半導体売上高を見る限り、スマホやPCに用いられる従来品の回復は依然道半ばだ。だが、上記でふれたように、半導体の生産集積地である台湾の動向をみる限り、先行きは明るい。こうした前向きな傾向が続き、広範な製品(用途)で半導体需要が回復すれば、日本の半導体企業(製造装置、部材)も恩恵を受け、株価上昇の牽引役になると期待される。
以上をまとめると、実質でみた日本経済は停滞が続いたとしても、価格転嫁の進展を受け、名目値でみた企業収益は拡大が続き、株価上昇を正当化すると見込まれる。また半導体関連銘柄を多く内包する日本株がAIブームの波に乗ることは比較的容易だ。日本株は年初に飛躍的上昇を遂げた後はレンジ相場に移行しているが、先行きは高値更新が期待される。
(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
藤代 宏一:第一生命経済研究所 主席エコノミスト
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